Research Abstract |
ソテツ科ソテツ(Cycas revoluta THUNB.), イチョウ科イチョウ(Ginkgo biloba LINN.), マキ科マキ属のナギ(Podocarpus nagi ZOLL.et MORITZ), マツ科カツマツ属のカラマツ(Larix leptalepis GORD.), の4樹種について, 核型分析と核小体形成部(nucleolar organizing region, 以下FNORと省略)および核小体の分染を行った. 研究結果の概要は以下の通りである. (1)ソテツ, イチョウ, カラマツ, ナギの体細胞染色体数は, それぞれ2n=22, 24, 24, 26であった. (2)ナギが含まれるマキ属の染色体構成は, これまで末端部あるいは次端部に動原体が位置するT型および大型染色体がその大部分であると報告されているが, ナギの染色体構成にはT型染色体は認められず, 大型染色体と中部あるいは次中部に動原体が位置するm型およびsm型染色体との構成であることが新たに明らかとなった. (3)イチョウの雌雄による核型の違いについてはこれまでに議論のあるところであるが, 供試4個体(実生の3〜4年生個体)のうち3個体には4本, 残り1個体には3本の付随体染色体が観察され, Lee,C.L.(1954)が指摘するように付随体染色体数の違いによる雌雄性の可能性も示唆された. (4)供試樹種すべてについて, 二次狭窄とNORの数が一致していることからNORの機能的な抑制は生じておらず, またイチョウでは, NORが3および4箇所の個体が認められたことから, 今後無性繁殖個体を用いた雌雄性核型の再確認の必要性が明らかになった. 本研究の以上のような結果と, 私達がこれまでに針葉樹で明らかにしてきた結果などから, 針葉樹のみならず裸子植物での細胞遺伝学的な種の識別と類縁関係の研究には, 染色体数や従来の核型分析のみではなく, NORの位置と数も極めて重要であり, しかも裸子植物でのNORは染色体の切断, 組換えなどを通じ, 染色体の末端部から, 染色体の介在部に位置するものへと進化してきた可能性が推測された.
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