1988 Fiscal Year Annual Research Report
SEMステレオ画像解析法による材木および紙の破面形態に関する研究
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62560178
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
古川 郁夫 鳥取大学, 農学部, 助教授 (50032313)
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Keywords | 材木細胞壁 / 予備圧縮 / スリッププレーン / 材質劣化 / 力学的性質 / SEMステレオ画像解析法 / 破面解析 / CII型破面 |
Research Abstract |
今年度は、昭和62年度に確立したSEMステレオ画像解析法を材木や紙の基本的構成単位である木材細胞壁の破断形態の定量化に応用した。特に壁中に微細な欠陥部(スリッププレーン)が存在する場合の材質的特徴ならびに壁破壊機構について定量的に検討した。(1)スリッププレーンによる木材の材質劣化:コナラの成熟材部および未成熟材部からブロック試験片をつくり、これらを縦圧縮破壊荷重の50%、85%、100%の3段階の荷重レベルで夫々予備圧縮することによって、試験片中のスリッププレーン発生量を人為的に変えた。次にこれらの予備圧縮試験片から縦引張試験片を作製し、これらの縦引張強度、ヤング率、破壊までの仕事量(靭性)を求めた。強度的性質は、どれも予備圧縮荷重レベルの増加とともに低下した。とくに靭性と強度の低下が顕著であり、ヤング率の低下は少なかったことから、スリッププレーンは木材を著しく弱くしかも脆く(脆弱化)することが分かった。これはミクロフィブリルの折損による骨格物質の機能低下とともにミクロフィブリル界面での結合点の破壊による複合材料特性の低減によるものと考えた。(2)予備圧縮材の壁破面の特徴:100%荷重レベルで予備圧縮したユナラ木繊維壁の破面は健全材のそれと著しく異なり、典型的なCII型破面だけで構成されていた。しかも破面の傾斜方向(S_2のせん断辷り面)には、壁面内で辷った面内せん断型(CIIi型)と壁面外に辷った面外せん断型(CIIo型)の2つの型が認められ、しかもいずれの場合においてもせん断破壊面の繊維軸に対する傾斜角は約60°であり、スリッププレーンの傾斜角と一致した。したがって、スリッププレーンの存在する木材はその力学的性質ならびに最終破断はスリッププレーンによって支配されているといえる。このようにスリッププレーンは微細な欠陥部であるが木材細胞壁材質にとっては致命的な欠陥部ともなりうることが分かった。
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