Research Abstract |
奄美大島を含む南九州地域は, 暖帯および亜熱帯地域に属し, ここには多くの有用な広葉樹が生育している. それにもかゝわらず, 用材として利用されていない樹種も多く, この地域の広葉樹材の用材としての利用開発は, 国内の他地域に比較して一段と遅れている. このような背景にあって, 本研究ではこの地域に生育している有用未利用広葉樹材の材質特性を明らかにし, あわせて乾燥特性, 加工法を確立し, 今後の最大の有効利用法を確立することを目的とする. 研究成果の概要は以下のとおりである. 1.暖帯および亜熱帯広葉樹10樹種(イジュ,フカノキ,シラッグ,イノスギ,タブノキ,オキナワウラジロガシ,ムツナラビ,イイギリ,ハマセンダンおよびサイカチ)の物理的, 機械的材質特性を明らかにした. 内地産の同属種よりやゝ比重は高く, 収縮率もやや大きい. ねじれ等が大きく, 乾燥はやや困難な樹種が多い. 2.暖帯および亜熱帯広葉樹の乾燥技術の確立のための基礎データの集積を行った. 比較的比重の高い樹種(イジュ,タブノキ,オキナワウラジロガシおよびサイカチ)について検討した結果, 乾燥時間(所要日数)は比重,板厚,温度,湿度および風速に支配されるが, これらはやゝゆるやかなスケジュールを工夫すれば, 歩どまりの高い木材加工用材, 建築特殊用材としての利用も可能である. 3.加熱乾燥による乾燥障害の発生は, 落ち込みやすい樹種として, イジュ,オキナワウラジロガシ,ハマセンダン,イイギリがあげられ, 割れやすい樹種として, オキナワウラジロガシ,タブノキおよびサイカチがあげられる. しかし, これらの樹種の加工仕上げは比較的美しく, 工芸用品材としても美しい. 加熱-真空併用乾燥の可能性は, 高含水率, 高比重材に対して, 適当な手段であると考えられる.
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