1987 Fiscal Year Annual Research Report
異体類体色異常個体の形態・組織学的特性と発生機構に関する研究
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62560193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青海 忠久 京都大学, 農学部, 助手 (10144338)
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Keywords | ヒラメ / 白化個体 / 色素細胞 / 細胞分化 / 皮膚 / 変態 |
Research Abstract |
本年度は, 変態期に起きる色素細胞を中心とした皮膚の微細構造を観察し白化個体の出現機構について検討した. HE染色による光顕的観察では, 正常群の仔稚魚の各発育段階の皮膚には有眼側と無眼側の間において, その構造にそれほど顕著な差異は認められなかった. 皮膚の微細構造からみると, ヒラメ仔稚魚の皮膚は表皮・真皮から成り, その下部は筋肉層と接していた. 表皮は上皮細胞と粘膜細胞および塩類細胞から成り, 基底膜で真皮層と接した. 真皮層は, 仔稚魚には最上部にこう原線維性層板があり, その下部に線維芽細胞と色素細胞があった. 稚魚期後半になると表皮基底膜の下部に造骨片細胞が認められ, 有眼側ではこの上部に色素が粒を含んだ色素細胞が配列し, 無眼側では白色素胞のみが散在した. 正常群もしくは白化群について, 有眼側および無眼側の成長にともなう構造の変化を比較したが, 色素細胞の配列以外に, これらの間に基本的な相違は認められなかった. 電顕による, 色素芽細胞および色素細胞の微細構造の観察により, 正常群皮膚の色素細胞の分化過程とヒラメ仔稚魚の発育段階との対応は下記のように類別できた. 1)色素芽細胞移動期, 2)色素芽細胞定着期:E-stage, 3)色素芽細胞分化始動期:F-stage, 4)色素芽細胞分化期:G-H-stage, 5)色素芽細胞形質発現期:I-stage, 6)色素細胞充実期:稚魚期後半から幼魚期. これらの色素細胞の分化過程を通して, 有眼側は色素芽細胞の分化の促進, 無眼側は分化の阻害および細胞の崩壊が進んだ. 白化群皮膚は, 色素芽細胞移動期(D-stage以前)から色素芽細胞定着期(E-stage)までは正常群と同様であったが, 色素芽細胞分化始動期以後は, 両側とも正常群の無眼側と酷似した状態であった. したがって, 白化群の有眼側では, 当初分化予定域に達していた色素芽細胞に, 分化途上における崩壊畏縮がおこり, 細胞の分化が阻害されて白化したと推察された.
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