1987 Fiscal Year Annual Research Report
フローインジェクション分析法による水産環境の精密観測
Project/Area Number |
62560194
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松田 治 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (60034469)
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Keywords | FIA / DIP / フロント / 航走連続観測 |
Research Abstract |
フロントやパッチなど時間・空間的に変動の大きい海洋現象に関し, 精密な情報を得る目的で, 本研究では溶在態無機リン(DIP)の航走連続観測にフローインジェクション分析法(FIA)を導入し, その測定法の確立と現場海域への応用を試みた. 現場精密観測に先だち, FIAの最適測定条件を検討した. FIAの流路にはautomatic refractive index matching systemを取り入れ, モリブデン・アフコルビン酸法で実施した. まずサンプル流量と反応コイルの影響を調べた結果, 反応コイルを装着せず, サンプル流量1.44ml/minの場合が最も優れていた. サーモスタットの温度設定は50°Cが最適であった. またアスコルビン酸濃度は10g/100mlでゲインファクター10のとき感度が最大となった. これらの条件下で, 測定値は試水中塩分が24%から36%まで変っても影響を受けなかった. このFIAによる測定結果と従来の手分析の測定結果を比較したところ, 相関関係0.999, 回路係数が1.064となり, FIAによる海水中DIPの測定値は充分信頼できることが判明した. 上記のFIAシステムを広島大学練習船「豊潮丸」に塔載し, 1987年11月に日向灘において, 表層海水中DIPの航走連続観測を実施した. これと並行して水温・塩分・クロロフィル・濁度の変化を連続記録した. その結果, 沿岸フロント域で水温・塩分が低下し, クロロフィル・濁度が増大するのに伴ってDIPが増加する状況が連続的かつ精密に観測された. これにより従来のスポット的な観測では得られなかったDIPの微細な分布や変動が測定可能となった. FIAを現場観測に利用することは, その高いサンプル処理能力, 殆どリアルタイムで測定結果がモニターできる点などで利点が多いことが明らかとなったが, さらなる性能の向上が期待される.
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