Research Abstract |
フラスコなどの培養器内の弱光, 高湿度, 恒温条件下で生長した組織培養苗は, 順化過程において, 生長抑制を呈したり枯死したりすることが問題となっている. この問題のかなりの部分は環境調節によって回避できるものと考えられる. 本研究では, すでに開発した環境調節装置(順化装置)を利用して, 培養器内で無菌培養された組織培養菌を供試して, 順化期間の短縮と活養率を向上するための好適順化環境を探索することを目的とする. 本年度は, 2台の順化装置を用い, 昼間に炭酸ガス濃度が約700ppmになるよう炭酸ガスを施工した区(炭酸ガス施用区)と, 無施用の区(無施用区)を設け, キクおよびショウガを供試して生育比較試験を行い, 炭酸ガス施用による培養菌の生育促進効果を調べた. その結果, キクについては, 順化開始30日目の炭酸ガス施用区の乾物重は無施用区のそれの約1, 4倍, ショウガについては1.2倍となった. また, 葉数や草丈などについても炭酸ガス施用区のそれらは無施用区のそれらを上回り, 炭酸ガス施用によって, 生長が促進されることが確認された. このことから, 順化過程における炭酸ガス施用は, 培養菌の順化期間の短縮方法のひとつとして有効であると考えられた. さらに, 順化装置を利用して, 新たな苗増殖法を検討した. すなわち, 苗本数を増やす増殖時の培養開始から順化終了までの期間を短縮するために, 培養器内で生長したカーネーションを供試し, 慣行法にしたがってショ糖培地を含む培養器内に節挿しし培養後順化した場合と, 環境調節を行った. 順化装置内で節挿しし水耕養液によって生長させた場合の生育比較試験を行った. その結果, 試験開始40日目の後者のカーネーションの乾物重は, 前者のそれの約2倍となり, 光量を高めるなどの環境調節を行うことによって, 培地に炭素源物質を添加しなくても, 小植物体は従来の培養法と同等以上の生長を示すことが確認できた.
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