1987 Fiscal Year Annual Research Report
伝導路形成時における稀突起膠細胞の髄鞘形成機能発現の機構
Project/Area Number |
62570022
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 芳郎 北海道大学, 医学部, 教授 (20051584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 馨 北海道大学, 医学部, 助手 (80133718)
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Keywords | 稀突起膠細胞 / 髄鞘 / シバラ / mld / 髄鞘形成不全マウス / 実験モデルマウス |
Research Abstract |
正常マウス, 髄鞘形式不全マウスであるシバラ, mldおよびシバラとmldの間の初代雑種のマウスを用いて, 稀突起細胞の形成分化を発育経過を追いながら, 髄鞘形成の過程と関連させて検討した. 方法はゴルジ鍍銀法, エポン包理による光顕, 電顕, 髄鞘塩基蛋白質の免疫組織化学である. 結果 1.ゴルジ鍍銀像によると幼若稀突起膠細胞は正常, シバラ, mldを問わず同じような形態で多突起性の細胞である. 従って, 髄鞘形成開始時において, 稀突起膠細胞の軸索に対する行動はシバラ, mldともに遺伝的な欠陥はないと推定された. 2.mldの稀突起膠細胞は経時的に観察すると幼若型では細胞質内にゴルジ装置, 粗面小胞体の崩壊によると考えられる空胞化が生じる. 成熟とともに空胞は消え, ゴルジ装置, 粗面小胞体が再出現する. しかし, 対照に比してその発達は悪い. また〓質においては稀突起膠細胞の過剰発育が見られる. これらの所見はシバラに極めて良く類似する. 3.mldの髄鞘はシバラと異なり様々な程度に周期線の発現が見られる. しかも加令とともにその出現頻度は高まり時には正常型の髄鞘, あるいはシバラと同様に完全なラセン配列しないがシバラ型と異なって完全に周期線をもつものが認められた. mldはシバラ型が髄鞘塩基性蛋白を合成する遺伝子が欠如しているのに対して, この遺伝子が重複しているために転写の機構が不全になっていることが判明した. このことにより, シバラと異なり周期線が発現しうると考えられる. 4.シバラとmldの初代雑種はシバラ, mldと同じ稀突起膠細胞の形態(光顕, ゴルジ鍍銀像, 電顕)を示し, 形成される髄鞘は周期線の量から言ってシバラに近いが, 一方, mldに類似して加令とともに形成量が増大した.
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[Publications] 井上 芳郎: 臨床免疫. 19. 834-841 (1987)
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[Publications] Mikoshiba,K. et al.: Developmental Brain Research. 35. 111-121 (1987)
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[Publications] Inoue, Y.: Brain Research. (1988)