Research Abstract |
成鼠の海馬形成部におけるエネルギー代謝を〔^3H〕-2-deoxyglucose, 〔^3H〕および〔^<14>C〕glucoseを用いてfreeze-mount microautoradiographyにより調べ, 銀粒子の密度は画像解析機により測定した. 〔^3H〕-2-deoxyglucoseのi.v.投与後45分で, 最も高いラベル部位は, 固有海馬回の分子-網状層であり, 次いで歯状回の分子層である. 放射層, 上昇層, CA3aの錐体細胞層は中程度のラベルであり, CA1, 2, 3b, c, 4, の錐体細胞層, 顆粒細胞層は低く, 透明層と歯状門は最もラベルが低い. 一方〔1-^3H〕および〔1-^<14>C〕glucoseのi.v.投与後15, 45分でもほぼ2-deoxyglucose(2-DG)と同じ結果が認められたが, 分子-網状層と歯状回の分子層との間には2-DGに見られるような有意のラベル差はなかった. また, 〔3-^3H〕glucose i.v.投与後45分では, 顆粒細胞層, CA3aの錐体細胞層のラベルが最も高く他の部位は中程度である. 電顕像によるシナップス量の測定では, 錐体細胞層と透明層が他層より有意に少なかったが他の層間では有意の差は認められなかった. 以上の結果より次の結論と推論が成立する. 結論, (1)海馬形成部においてエネルギー代謝が最も高いのは, 固有海馬回の分子-網状層と歯状回の分子層である. (2)最も低いのは, 歯状門から透明層に至る苔状線維系である. (3)CA3aの錐体細胞層はCA1, 2, 3b, c, 4に比し, エネルギー代謝が有意に高い. 推論, (1)2-DGのラベルが海馬回の分子-網状層の方が歯状回の分子層より高いのは, シナップスの量の関与によるものではなくgliaによるものであり, このgliaのglucose-6-Paseの活性が低いことによると考えられる. (2)CA3aの錐体細胞層および顆粒細胞層は, エネルギー代謝亢進に伴う乳酸蓄積の場としての可能性がある. 従って次年度では, glia特にastrocyteの層的分布状態およびこれら酵素の分布を調べる計画がある.
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