Research Abstract |
本年は, 延髄腹外側野のうち主として頭側野について, その交感神経性血圧調節作用を研究した. その結果, 頭側野がさまざまな反射性入力を統合して, 交感神経の活動を調節し, 血圧の中枢性調節にあずかることを証明した. 反射性入力のうち, 血圧受容器, 化学受容器からのものはすでに報告されているが, そのほかに脊髄性および三叉神経性の求心性入力, および, 腎臓の求心線維からの入力が頭側野にも投射して交感神経反射をおこすことは, この研究により始めて明らかになった. 先ず, 血圧受容器からの入力に関しては, 頭側野のニューロンを抑制し, しかもこのようなニューロンの約半数は脊髄に下行性軸索を送り, 交感神経の活動と血圧を調節することが分かった. このような「圧受容性ニューロン」は, さらに化学受容器からの入力により興奮し, 特に反射側の化学受容器からの影響が大きいことが見出された. つぎに, 脊髄性知覚線維からの入力に関しては, 皮膚性および筋性知覚線維の第2, 3, 4グループにつき調べた. その結果, 皮膚性の第2および筋性の第3, 4グループの線維は, 圧受容性ニューロンを抑制し, 皮膚性の第3, 4グループはこれを興奮させることを見出した. 他方, 三叉神経からの入力はニューロンの興奮と抑制をともにおこした. さらに, 圧受容性ニューロンの約4分の3は, 腎神経の求心線維からの入力も受け, 脊髄の下行性線維により交感神経の活動と血圧を調節する. しかも, 腎神経-交感神経反射は, 頭側野に隣接する延髄腹側表面に薬物を与えるとブロックすることも見出された. このように, 頭側野は, さまざまな末梢性入力を統合して交感神経活動と血圧を調節する部位であり, 心臓血管中枢とよぶにふさわしい部位であることが分かった.
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