1987 Fiscal Year Annual Research Report
神経成長因子(NGF)の神経堤由来ニューロンに対する分化誘導作用の研究
Project/Area Number |
62570057
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
小川 正晴 高知医科大学, 医学部, 助教授 (50111951)
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Keywords | 神経成長因子 / 交感神経節 / 知覚神経節 / 副腎髄質 / 神経堤 / 分化 / 副腎皮質ホルモン |
Research Abstract |
神経成長因子(NGF)は, 知覚神経節, 交感神経節などの末梢ニューロンあるいは中枢のコリン作動性ニューロンの生存と成長に重要な役割を担っている. たとえば, 発生初期の段階で, 抗NGF抗体によって, 特異的に生体内のNGFを枯渇させておくと, 末梢ニューロンが死滅すること, 交感神経節ニューロンでは, シナプスを介して標的器官から逆行性にNGFが供給され生存と成長が保証されていることが示されている. ところで, これらの末梢ニューロンは神経堤細胞に由来し, 神経堤より移動を開始した後の環境要因によって前駆細胞からニューロンへと分化決定されている. 筆者らは先に, 神経堤由来の内分泌細胞である副腎髄質細胞が, NGFによってニューロンへと分化転換すること, その際に副腎皮質ホルモンによってこの分化転換が抑制されることを明らかにしてきた. これらのことから, NGFには神経堤由来のニューロンの栄養因子としての働きに加えて, ニューロンへと分化誘導させる作用が推察され, 本研究で検討している. 実験動物としてはラットを用い, 胎盤経由で胎仔にNGF, 抗NGF抗体, あるいは副腎皮質ホルモンを作用させた場合, あるいは神経堤由来組織を取り出し, 培養系においてニューロンの形質発現に対するこれの物質の影響を検討し, 以下のような諸結果を得ている. (1)末梢神経節ニューロンの分化決定時期の解析. 上頸部神経節(交感神経節)および胸部の知覚神経節の細胞核DNA複製能を, BudRのモノクロナル抗体を用いて検索し, これら神経節ニューロンの分化決定時期を求めた. (2)NGFによって交感神経節ニューロンの分化決定時期が促進され, 逆に, 副腎皮質ホルモンによって遅延されることが見出された. (3)In vitro系において, 副腎髄質細胞がNGFによって細胞分裂を伴うことなくニューロンへと分化転換することを明らかにした. このことは, ニューロンは臨界分裂をもって発生するとする従来の仮説を否定する.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Stepher D. Meriney: J. Neurosci. 7. 3840-3849 (1987)
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[Publications] 小川正晴: 病態生理. 6. 847-851 (1987)
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[Publications] 小川正晴: 医学のあゆみ. 140. 9-12 (1987)
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[Publications] 小川正晴: "副腎髄質細胞の分化転換性" 東京化学同人,