Research Abstract |
浮遊ミトコンドリアを用いて, 分光学的にチトクロム類の差スペクトルを見ることによって, プロスタグランジン類緑体の添加効果を調べたが, 有意な変化を見ることができなかった. これは, ミトコンドリア調整時に, リン脂質の急速な分解が起こり, フォスフォリパーゼの働きにより脂肪酸が遊離して, その結果, チトクロム電子伝達系が脱共役状態に陥ったか, あるいは, 脂肪酸遊離の結果プロスタグランジンが産生されて, 既にその効果を及ぼしてしまったのか, という2つの原因が考えられる. 従って, 現在, ミトコンドリア調製時の温度条件を変えたり, 調製時にフォスフォリパーゼ・プロスタグランジン合成酵素の阻害剤を用いることにより, プロスタグランジン類の効果を再検討している. また一方で, ^3H標識デオキシグルコースを用いて, 脳のエネルギー代謝, 即ち, 脳細胞にミトコンドリア呼吸に対するプロスタグランジンの効果を検討した. 初めに, 麻酔下及び覚醒状態のラットの脳の局所糖利用能をソコロフの方法で測定し, プロスタグランジンD_2, E_2, F_<2α>をそれぞれ静脈内に持続注入したが, 脳内への到達量が少ないためかコントロールと比べて有意な糖利用脳の変化が得られなかった. そこで, 無麻酔・半拘束状態のラット脳に留置カニューレを埋め込み, 脳室内に各プロスタグランジンを一定時間注入し, 脳局所糖利用能を調べたところ, 大脳皮質を中心に2割程度の糖利用能の低下を示す部位があり, プロスタグランジンの鎮痙・鎮静作用の分子機構として, この細胞呼吸の変化を位置付けし得る可能性が示唆された.
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