1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62570126
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Research Institution | Fukui Medical School |
Principal Investigator |
箸本 英吉 福井医科大学, 医学部, 助教授 (20116239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 庸一郎 福井医科大学, 医学部, 助手 (00187030)
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Keywords | 細胞増殖 / Na^+ / H^+交換輸送系 / Ca^<2+>-燐脂質依存性 プロテインキナーゼ(Cキナーゼ) / プロテアーゼ / 限定分解反応 / 細胞内Na^<+ >流入 / イオンシグナリング / 細胞増殖因子 |
Research Abstract |
細胞の増殖時には細胞膜のNa^+/H^+交換輸送系の活性化による細胞内Na^+流入および細胞質のアルカリ化が認められるがその生理的意義は不明である。私共はこれらの現象が細胞増殖因子や発癌プロモーター、ホルボールエステルなどによる情報伝達反応とも関係する可能性を想定してプロテインキナーゼの活性化に及ぼすイオン強度やpHの影響を調べた。その結果肝細胞膜のCa^<2+>-燐脂質依存性プロテインキナーゼ(Cキナーゼ)が膜結合性のトリプシン膜プロテアーゼによりイオン強度依存性にアルカリpH下で限定分解を受け活性化されることを明らかにした。 そこで今年度はこの活性化反応機構を解析するためまず肝細胞膜より可溶化したCキナーゼとトリプシン様プロテアーゼを各種クロマトグラフィーを用いて部分精製した。これらの酵素標品を用いて反応機構を解析したところCキナーゼは生理的なイオン強度からやや高い条件下(140〜210mM NaCl)にかけてプロテアーゼにより活性化される。この反応にはCa^<2+>と燐脂質を必要とし、ロイペプチンやウシ膵臓のトリプシンインヒビターで阻害される。またこの活性化に伴いCキナーゼのCa^<2+>-燐脂質依存性はほぼ完全に失われゲル濾過法で分子量は8万から4.5万に減少した。このイオン強度依存性は膜のトリプシン様プロテアーゼ以外にカルパインを用いても認められることからCキナーゼに対して直接に作用して立体構造に影響を与えている可能性が考えられる。これらの結果は肝臓の膜結合性のCキナーゼが膜周辺のイオン強度やpHの変化に対応して限定消化を受け活性化を受け活性化される可能性を示唆している。 細胞膜のNa^+/H^+交換輸送の活性化は多くの増殖因子によって普遍 的に認められる現象でありその結果引き起こされる細胞内Na^+流入やアルカリ 化は細胞の分裂増殖を初めとする多くの細胞機能の調節に関わることが予想されその 生理的意義の解明は医学的にもきわめて重要な課題である。
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[Publications] Kaoru,Nishiyama: Biochemistry International. 17. 51-58 (1988)
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[Publications] Eikichi,Hashimoto: Journal of Biochemistry. 104. 934-938 (1988)
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[Publications] Masahiko,Hoshijima: Biochem.Biophys.Res.Commun.157. 851-860 (1988)