Research Abstract |
片腎を摘出しDOCAを投与し, 1%食塩水を飲用させて血圧を上昇させたラットの尿中より, 部分特製した脳Na^+, K^+-ATPaseの阻害活性を指標として内因性ジギタリス様物質を薄層クロマトグラフィー法にて単一と認めるまで精製し, その性質を検討した. 本標品は1)分子量500以下を通過させるとされる限外ろ過膜YC-05を通する, 2)等電点が約8.4の両性電解質である, 3)ラット脳Na^+, K^+-ATPaseを用量依存性に阻害する, 4)血圧を上昇させる, 5)そのNa^+, K^+-ATPaseに対する阻害活性プロナーゼ, トリプシン, キモトリプシン, グリコペプチダーゼA等の酵素処理では影響を受けないが, プロリダーゼ処理にて減少する, 6)酸加水分解(6NHCl, 110°C, 20時間)はNa^+, K^+-ATPase阻外活性を変化させないが, アルカリ熱処理(pH10, 100°C, 2時間)はその阻害活性を低下させる, 7)ウァバインと同様にラット脳Na^+, K^+-ATPaseを非競合的に阻害する, 8)K^+依存性のP-ニトロフェニールホスファターゼ活性を阻害する. 更に本物質の性質はヒト尿中より精製同定されているメチルアルボニンのそれと類似していることが明らかとなった. 即ち, メチルアルギニン, 特にN, N-ジメチルーL-アルギニンはNa^+, K^+-ATPaseを阻外し, その阻害活性はプロリダーゼ処理に減少し, 抗ジゴキシン抗体アフィニティーカラムに結合した. また, 本標品と類似した物質がラット脳にも2種類以上存在し, その物質のNa^+, K^+-ATPase阻害活性もプロリダーゼ処理にて減少することも認めている. 今後, 脳内の本物質も精製し, 両標品を質量分析法, NMR法その他で同定し, その物質を化学合成し, 測定法を確立すると共に, 生体内における本物質の存在部位を, 特にその存在が示唆されている視床下部を中心にして検討したいと考えている.
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