1988 Fiscal Year Annual Research Report
神経ペプチドの生合成と代謝に及ぼす向精神作用物質の影響に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
62570140
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Research Institution | Tokyo Institute of Psychiatry |
Principal Investigator |
吉川 和明 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究室・研究部副参 (30094452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 明広 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究室, 技術部主事研究員
相沢 貴子 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究室, 技術部主事研究員
亀谷 富由樹 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究室, 研究部主事研究員 (70186013)
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Keywords | 神経ペプチド / エンケヘァリン前駆体 / 遺伝子発現調節 / 細胞内情報変換系 / グルココルチコイド |
Research Abstract |
向精神作用物質はニューロン内の情報変換系を介して、神経ペプチド遺伝子発現を調節する可能性が高い。たとえば、アミン類、ペプチド類の神経伝達物質や修飾物質やそれに作用する種々の薬物は、受容体→サイクリックAMP→プロテインキナーゼA系を介して、神経ペプチド遺伝子発現を調節しているものと推定される。そこで、63年度は、エンケファリン前駆体(ppEnk)遺伝子を発現している培養細胞をモデル系としてプロテインキナーゼAおよびC系、さらにグルココルチコイド系のppEnk遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。 1)ラットのセルトリ細胞ではppEnk遺伝子発現は、卵胞刺激ホルモンやノルアドレナリンなどによって増加した。この増加はメッセンジャーRNAやエンケファリン活性ペプチドの増加を伴うものであり、これらのホルモンはプロテインキナーゼA系を介して、エンケファリン合成系を活性化するものと考えられる。 2)ラット精細管周囲細胞を用いた研究において、ppEnk遺伝子発現はプロテインキナーゼC系の活性化物質であるホルホルエステル(TPA)によって著しく増加した。このTPAによる活性化はプロテインキナーゼA系の活性化物質によって協同的に増強されたが、グルココルチコイドによっては影響を受けなかった、(グリココルチコイドはプロテインキナーゼA系の作用のみを増強した)。 以上の結果からppEnk遺伝子の発現はプロテインキナーゼAおよびC系、さらにグルココルチコイド系の3者の相互作用によって調節されていることが明らかになった。この調節機構は他の神経ペプチド-たとえばニューロペプチドY、VIP、ソマトスタチンなどの遺伝子発現においても作用している可能性があり、神経ペプチド遺伝子発現一般に共通の機構をして、さらに分子レベルでの解析を進める予定である。
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[Publications] 吉川和明: 神経化学. 26. 76-78 (1987)
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[Publications] 相沢貴子: 神経化学. 26. 256-258 (1987)
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[Publications] 吉川和明: 生化学. 59. 453-456 (1987)
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[Publications] 吉川和明: Biochem,Biophys Res.Commun.151. 664-671 (1988)
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[Publications] 吉川和明: FEBS Letters. 237. 183-186 (1988)
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[Publications] 吉川和明: Molecular Brain Research.4. 87-96 (1988)
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[Publications] 相沢貴子: 神経化学. 27. 350-351 (1988)
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[Publications] 吉川和明: 神経化学. 27. 356-357 (1988)
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[Publications] 山本明広: 神経化学. 27. 358-359 (1988)
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[Publications] 吉川和明: FEBS Letters. (1989)