1988 Fiscal Year Annual Research Report
生検組織のin vitro標識法による慢性肝疾患の病期の解析(肝細胞の細胞回転と線維化の進行様式)
Project/Area Number |
62570141
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉藤 澄 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (20114754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 直見 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60111530)
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Keywords | 慢性肝炎 / 肝硬変症 / 細胞周期 / 標識率 / Bromodeozyuridine / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
目的:慢性肝疾患における一定時期の肝細胞の障害と線維化の度合いは、常に進行するものではなく、炎症の盛衰と肝細胞再生の活性化により変動するもので、そのために病理組織像から病期と予後を判定することが困難であるものと考えられる。本研究では肝構成細胞の細胞回転を知ることにより、日常の肝生検組織診断に際し病期の判定、肝細胞の予備力、予後の推量に役立てようとする。 症例と方法:肝硬変症(LC)3例、慢性活動性肝炎(CAH)9例、慢性非活動性肝炎(CPH)1例、治癒期急性肝炎(AH)2例を検索に用いた。1時間の短期組織培養にてBromodeoxyuridine(BrdUrd)を取込ませ、抗BrdUrd単クローン抗体を一次抗体として、ABC法にて免疫組織化学を行ない、S期肝細胞の標識率と分布を求めた。併せて細胞増殖に関与するといわれるEGF,EGF-recepter,c-Ha-ras-,c-myc-oncogene productsの分布を免疫組織化学的に検討した。 結果:BrdUrdにて標識された肝細胞はLCとCAHの全例において10〜30%(平均28.5%)認められたのに対し、CPHとAHでは1%以下であった。標識率の高いLC例では1つの偽小葉の大部分の細胞がS期細胞より成立っており、活発に再生増殖していることが明らかとなった。しかし、線維化や炎症の度合いとの間にEGF,oncogene productsは全例においてび慢性に肝細胞に認められたが、EGF-recepterは陰性であった。 考察と反省:LCとCAHでは、肝細胞が活発に再生していることが明らかにされた。これに対し、CPAや治癒期AHでは、肝細胞は休止期(Go)にあることが示された。しかし、各症例における標識率は10〜30%と差異が大きく、病理組織像と臨床像と併せて、その意義の検討が必要である。細胞増殖を促進させるEGF,c-Ha-ras-,c-myc-oncogeneのproductsが再生肝細胞に陽性であったことは興味深い。今後の詳細な検討が必要である。^3H-prolineによる線維化の検討は、オートラジオグラフィー標本の作製が困難であり、次年度に繰越された。
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