Research Abstract |
老化促進モデルマウス;SAM-R13系老齢マウスに白内障が観察される事から, 家系図を用いた好発系の選抜, 兄妹交配による純系化により, 新しい老年性白内障モデルマウスの作成が進められているが, 今年度は17世代に達した. 白内障の頻度も, 6ヵ月齢以上の群で, 当初7%であったのが現在80%に達している. 1.本年度行なった疫学的検索から, (1)この白内障は約10週齢以降出現し, 雄は5ヵ月齢前後に約60%に達する. 雌はさらに増加し, 寿命末期には約90%に達する. (2)白内障は片眼性に初発(右側に多い). 老齢マウスでは両眼性となる. (3)角膜, 眼〓の炎症性変化は白内障より遅発で低頻度である. 以上からこの白内障は通常マウスに認められる, 先天性白内障と異り, 加齢と伴に発症し, 水晶体自身に発症の原因がある事が示唆された. 2.尿糖検査により, ヒト成人にしばしば認められる糖尿病性白内障でない事が判った. 3.遺伝的解析では, 白内障形質は, 浸透度の高い優性遺伝を示さないことが判った. 4.白内障発症機序の解析を開始した. (1)水晶体湿重量, 水分含量, 蛋白量を, 加齢及び, 正常, 前白内障, 成熟白内障で検討した. 成熟白内障では, 低湿重量, 低蛋白量, 高含水率を認めた. しかし前白内障状態と正常の間には差を見ず, これらは白内障の原因でなく結果である事が示された. (2)又, 水晶体の発育不全, 種々の原因による浸透圧変化による白内障でない事が示された. (4)実体顕微鏡下の観察により, 成熟白内障は, 水晶体後方突出, 水晶体核後方偏位がみられ, 前白内障状態では, 混濁又は透明な後極突出, 突出のない, 前後極混濁の4型が認められ, 特に前2者の頻度が高い事から, 白内障発症機序の手懸りにあると思われた. 5.63年度においては, 系統の維持, 白内障発症率の増加をはかる. 又組織学, 生化学, 細胞学的に白内障発症機序の解明を進めてゆく計画である.
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