1987 Fiscal Year Annual Research Report
フィラリア感染における好中球遊走因子とアレルゲンの役割とそれらの相互作用-フィラリア虫体の免疫回避との関連について-
Project/Area Number |
62570177
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 紘一郎 東京医科歯科大学, 医学部・医動物学教室, 教授 (90053107)
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Keywords | フィラリア / 好中球遊走因子 / アレルゲン / 虫体の免疫回避 |
Research Abstract |
寄生蠕虫が他の病原生物と大きく異なる点の一つは, 寄生蠕虫の宿主の免疫応答に逆らってぬくぬくと生き続ける術を備えていることであろう. 我々はこれまで, 宿主の免疫の中心の場であるリンパ系に寄生しながら, 他の寄生虫に比べて長期間寄生するという特徴をもつフィラリアを用いて, 虫の免疫回避に重要な役割を演ずる因子について研究してきた. そして, 虫体の周辺に好中球を集積させる因子, 好中球遊走因子(NCF)が重要な因子の一つであることが判明した. 本年の研究目的は, まず, フィラリア虫体がもつ好中球遊走因子について, その物理・化学的性状を明らかにすることであった. まず, 本年度, フィラリアの一種, Dirofilaria immitis成虫抽出物をDE52anion-exchange chromatographyやSephacryl S-200でゲル濾過することによって精製したNCFを得ることができた. このNCFは, polyacrylamide gelelectrophoresis(PAGE)やsodium dodecylsulfate(SDS-PAGE)で一本の蛋白バンドであることが証明された. この物質の分子量はSephadex G-150で約17,000, SDS-PAGEで14,000となり, 我々が光に精製したアレルゲンとほぼ同じ大きさであることがわかった. さらに, この物質は等電点4.5の酸性蛋白で, レクチンやコンカナバリンとも吸着しない物質であった. NCFのchemotactic活性は56°C1時間で失活したがperiodate oxidationには抵抗し, 活性を保持した. 以上の事実はNCFは糖をほとんど含まないペプチドであることを意味している. NCFのアミノ酸構成をみると, Glutamic acidが最も多く, 次いでAsparatic acid, Threonine, Serineの順となり, 先に我々が精製したアレルゲンとよく似ていることがわかった. 現在, このNCFの由来や精製アレルゲンとの差異について検討中である.
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[Publications] H. NAKANISHI;Y. HORII;K. FUJITA;K. TERASHIMA;M. UEDA;K. KUROKAWA: Tropical Medicine. 29. 61-64 (1987)
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[Publications] 堀井洋一郎, 寺島賢二郎, 中西弘有, 藤田紘一郎: 寄生虫学雑誌. 36. 45 (1987)
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[Publications] 中西弘有, 堀井洋一郎, 寺島賢二郎, 藤田紘一郎: 寄生虫学雑誌. 36. 46 (1987)
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[Publications] 寺島賢二郎, 中西弘有, 堀井洋一郎, 藤田紘一郎: 寄生虫学雑誌. 36. 56 (1987)
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[Publications] 在津誠, 小田力, 森章夫, 上田正勝, 藤田紘一郎: 衛生動物学雑誌. 38. 127 (1987)
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[Publications] 小田力, 末永歛, 森章夫, 在津誠, 上田正勝, 藤田紘一郎: 衛生動物学雑誌. 38. 128 (1987)