1987 Fiscal Year Annual Research Report
産業化学物質の原子構造特性と神経毒性に関する量子化学的研究
Project/Area Number |
62570232
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
三角 順一 大分医科大学, 医学部, 教授 (40109658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊江 隆 弘前大学, 医学部, 助手 (40145363)
島岡 章 大分医科大学, 医学部, 助手 (40136792)
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Keywords | 2,5-ヘキサンジオン / 神経毒性 / 分子軌道エネルギー / 構造毒性相関 / 量子化学的研究 |
Research Abstract |
パーソナルコンピュータ一式を購入し, 当講座に設置し研究を遂行してきた. 炭素数4から8の脂肪族ケトンのケトン間距離の異なるジケトン化合物, 13個, 及び炭素数3から8の2位にカルボニルを有するモノケトン6個の合計19個の化合物について, 岡崎市の国立分子化学研究所の大型コンピュータに組み込まれているプログラム, ガウス82を用い, ab initio LCAO SCF MO法により, 前述の化合物の最高被占軌道エネルギー, 最低空軌道エネルギー各原子の荷電状態, 総エネルギー, ケトン間距離などを計算した. この計算結果を化合物の神経毒性の強さと比較検討してみると, ケトン間距離の異なるジケトンでは神経毒性と量子化学的パラメータとの間には相関関係は認められなかった. 炭素鎖が異なるケトン間距離がγ位である2.5-ジケトン化合物について検討すると, 最高被占軌道エネルギーと神経毒性の強さとの間には関連性がみられなかったが, 最低空軌道エネルギーと神経毒性との間には良い相関が認められた. このことは, 2.5-ヘキサンジオンの反応する生体側の組織が, 電子受容性を有するものであることを示している. DecaprioやAnthonyらのこれまでの生化学的研究によると2.5-ヘキサンジオンがアミノ基と結合しピロール化合物を形成するといわれており, 今回の量子化学的研究の結果も最低空軌道エネルギーが低く, 生体の蛋白分子のアミノ基, SH基やOH基との結合を示唆しており良く一致するものと思われる.
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