Research Abstract |
農作物栽培起因性の皮膚障害を, オクラ栽培作業を例に現地疫学的に明らかにするとともに, 原因成分の究明を実験的に検討した. その結果, 1.鹿児島県南薩地方のオクラ栽培作業者(男子76名, 女子110名, 計186名)に対する自己記入質問紙法の調査によると, 対象者の46.3%がオクラ栽培に伴って皮膚障害を経験している. その主な症状は, 掻痒, 発赤が主体であり, 手腕, 頸部, 手指, 手背, 顔面など露出部に生じやすい. 皮膚障害は莢果の収穫作業と袋詰作業時に特に発生しやすく, ハウス内労働も問題が多い. 好発季節は, 夏期(5月から9月)に集中し, ピークは7月である. 原因となるオクラの部位は, 葉, 毛茸, 莢実が特に問題視されている. 品種別に障害発生の差異はなさそうである. 皮膚障害の予防措置は種々であり, 収穫作業時は, 大部分の者は長袖シャツ, 布腕カバー, ゴム手袋, 軍手, 地下足袋の姿であり, 袋詰作業時は, 半数近くが長袖シャツ, ゴム手袋, 軍手, 布腕カバー着用の姿である. しかし調査時点では, 必ずしも有効な防護体制を整えていなかった. なお, 農薬の関与は少なそうである. 2.オクラ栽培作業者(男子12名, 女子34名, 計46名)に対して, オクラ莢果成分(ホモジュネート上清, 水10倍希釈)による皮膚貼付試験を実施した結果, 3品種のうち, 近年多くの者が栽培している東京五角に対する陽性率がやや高い傾向(17.4%)がみられた. 3.オクラの葉および莢果のホモジュネート上清区分について, モルモットを用いた動物実験では, 皮膚刺激性, 感作性いずれも確認できなかった. 今後, 実験条件の改良, オクラ成分の抽出法の検討が必要である. 次年度は, 皮膚障害の発症機序とその原因成分について, 疫学的, 実験的にさらに明確にし, あわせてその予防対策について検討する.
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