Research Abstract |
従来の成人病検診における眼底検査は脳卒中の予知を主たる目的としていたが, これからの高齢化社会においてはこれに加えて寝たきり老人やぼけ老人の予知が重要な課題となる. 本研究では地域における高齢者(70〜75歳)の眼底所見について, まず最初にその所見の出現率について検討した結果, Keith,Wagener分類についてみると0度は男39.3%, 女39.8%であり, 同様に1は男39.3%, 女42.0%, IIaは男18.9%, 女12.7%, さらにKeith,Wagener分類IIhに相当する典型的な動脈硬化生網膜症が男2.5%, 女5.5%認められた. またScheie分類による高血圧性所見0度は男88.5%, 女90.1%, 1度は男7.4%, 女7.2%, 2度は男2.5%, 女2.8%, 3度以上は男1.6%, 女0.0%であったが, 細動脈硬化性所見0度は男41.0%, 女42.5%であり, 1度は男39.3%, 女40.9%, 2度は男17.2%, 女13.8%, 3度以上は男2.5%, 女2.8%と高血圧性所見と比較してその出現率が男女とも高かった. 次いで, 眼底検査と同時に実施されたBenton視覚記銘検査により眼底所見と精神機能検査との関連性を検討した. その結果, 眼底所見のKeith,Wagener分類とBenton検査の性格数との間には統計的に有意の関連性は認められなかった. また, Scheie分類においても同様であった. さらに眼底所見を中心に血圧, 心電図の循環器検査所見及びBenton検査の正確数, 誤謬数等との関連について多変量解析の手法(林の数量化III類)を用いて検討した結果, 第1軸は循環器検査等の所見の有無と解釈できたが, 第2軸については解釈できなかった. また, 眼底所見はBenton検査の正確数, 誤謬数とも近接した関係は見られなかった.
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