Research Abstract |
1.粉塵作業出稼ぎ経験者の追跡調査 出稼ぎ珪肺患者が多発している富山県東部の5地域を選び, 昭和52・53年度に患者把握のために行った出稼ぎに関するアンケート調査にもとずいて, レコードリンケージを行った. これらを昭和61年末まで追跡し, その結果は集計中である. 昭和60年6月末までの追跡結果では全部で2116人の追跡ができており(追跡率94%), 総観察人年は15.2535人, 一人当り平均観察人年は7.2年であった. 職歴別死亡率は千人年当り, 粉塵作業出稼ぎ者23.0であり, 粉塵作業以外の出稼ぎ者(同15.5), 非出稼ぎ者(同9.5)より高く, 年令別では60〜70才代でこの傾向が顕著であった. 粉塵作業出稼ぎ者の死因別死亡率は, 人口千人年対悪性新生物5.4(内肺癌1.8,胃癌1.3), 肺結核4.9,塵肺4.0,心疾患3.6,脳血管疾患2.2の順であり, 非出稼ぎ者に比べて呼吸器系の疾患で有意な超過死亡が認められた. また粉塵作業出稼ぎ者についてその死亡にかかわる要因を検討したところ, 粉塵作業30年以上の者, 自覚症状の有訴数5個以上の者で, 死亡率が増大する傾向を認めた. 2.粉塵作業出稼ぎ者の免疫異常 珪肺は種々の免疫異常を示すことが知られており, その発生, 進展にこの異常の関与が疑われている. そこで昭和62年度珪肺検診を受診した粉塵作業出稼ぎ者を対象に細胞性免疫の測定を行った. 珪肺患者のT細胞72.7±7.1%, B細胞14.7±5.9%, モノクローナル抗体を用いたリンパ球サブセットの測定ではOKT3,60.2±11.1%,OKT4,37.9±9.2%,OKT8,26.0±8.0%であり, リンパ球幼若化試験ではSI, 151.0±77.9であった. 昭和63年度には更に例数を増やすとともに, X線病型別の検討, さらには他の諸検査成績との関連を検討するなかで, 珪肺症進展に影響する要因を免疫学的側面から明らかにして行きたい.
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