Research Abstract |
いわゆる「変死体」として取り扱われる事例のほとんどは急性死亡(以下急死と略記)に由来するが, 急死は法医学上, 各種の問題を含んでおり, 社会的にも影響が大きい. そこで, 当法医学教室において, 昭和57年度から同61年度の間に取り扱われた変死体839例(検案184, 司法解剖387, 行政解剖268)について, 急死の原因およびその発生機序について検討した. 1.死亡を種類別に比較すると, 内因死(病死)24.6%, 自殺21.6%, 他殺11.2%, 自過失12.0%, 事故災害15.6%, その他15.3%である. 2.これを性別に比較すると, 男性74.7%, 女性25.3%であるが, 他殺では女性43.0%である. 3.他殺例を手段別に比較すると, 鋭器によるものが圧倒的に多い(約40%) 4.他殺例を年令別に比較すると, 20才代が多く, 10才未満と60才以上とがこれに次ぐ. 5.近親犯による被害者の年令をみると, 10才未満と60才以上が多い. しかも, 母殺しの約7割, 子殺しの母の約3割は精神障害者である. さらに, 精神障害者による他殺は, 全他殺例の22%に達している. 6.交通事故例は, 全検案数の約11%. 歩行者と自動二輪車の事故が全体の約2/3. 自動二輪車事故の約70%は10才代の男性により占められている. 7.疾病による急死(内因性急死)例では, 急性心疾患が約4割を示し, 脳血管系疾患, 消化器系疾患, 呼吸器系疾患がこれに次ぐ. 8.消化器系疾患による急死の大半は肝臓疾患(肝硬変症)であり, これは東京や大阪の約2倍の比率を示しているのが特徴的で, この原因としてアルコール飲料との関係が示唆される.
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