1987 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト悪性Tリンパ球の分化誘導における細胞内調節機構
Project/Area Number |
62570291
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長澤 浩平 九州大学, 医学部, 助手 (00108721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久志本 孝一 九州大学, 医学部, 医員
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Keywords | MOLT-3 / TPA / 分化誘導 / レセプター / PK-C |
Research Abstract |
ヒト悪性Tリンパ球(MOLT-3)が代表的なphorbol esterである12-0-tetradecanoyl phorbol-13-acetate(TPA)によって分化誘導されることはすでに報告した. 62年度の研究では, このTPAによるMOLT-3の分化誘導機構において, 細胞膜上のphorbol esterに対するレセプター, およびシグナル伝達物質としてのprotein kinase C(PK-C)の役割について検討した. まずTPAを含んだメチルセルロース中でコロニーを形成させることにより, MOLT-3よりTPA抵抗性の4種類のsubcloneを得た. これらの細胞は浮遊培養液中でもTPAの存在にかかわりなく同様に増殖した. phorbol esterに対するレセプターの解析は, 〔^3H〕phorbol-12, 13-dibutyrate(PDB)の結合を測定することによって行なった. これによると, 4, 23, 37°Cのいずれの温度においても4種類のTPA抵抗性のsubcloneへの〔^3H〕PDBの結合はMOLT-3へのそれに比べて, 約50%に減少していた. これについてScatchard解析を行なったところ, 〔^3H〕PDBの結合の減少はレセプターへの親和性の差によるものではなく, レセプター数の減少によってもたらされたことが明らかになった. この結果により, MOLT-3のTPAによる分化誘導にはphorbol esterに対するある一定数以上のレセプターが必要であると結論した. 次に4種類のTPA抵抗性細胞のPK-C活性を測定した結果, 細胞質画分でいずれもMOLT-3におけるそれの約50%に減少していた. TPAの刺激を加えると, MOLT-3においてはPK-C活性の細胞質画分から膜画分への著明な移動が認められた. これに対し, TPA抵抗性細胞ではPK-C活性が同様に移動するものの, その程度は明らかに小さいことが確認された. これらの結果より, TPAによるMOLT-3の分化誘導には細胞内のシグナル伝達物質として, PK-Cが重要な役割を演じていることが示唆された.
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[Publications] Mayumi, T: Exp. Cell Bid.
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[Publications] Yamauchi, Y: Caner Res.