1987 Fiscal Year Annual Research Report
肝再生, 肝発癌におけるB型肝炎ウイルスの役割;その分子機構の研究
Project/Area Number |
62570314
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上村 朝輝 新潟大学, 医学部, 助教授 (70018894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 忠弥 新潟大学, 医学部, 教授 (40027313)
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Keywords | B型肝炎ウイルス(HBV) / 肝細胞癌 / HBVキャリア / HBVDNA組込み / HBV transcripts |
Research Abstract |
20才台の無症候性B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアに発症した肝癌例の肝癌細胞・非癌肝細胞より, それぞれ組込まれたHBV DNAを含む染色体断片をクローニングし, 制限酵素マッピング, さらに塩基配列決定により, 組込まれたHBV DNAの構造を解析した. その結果, 肝癌細胞のクローンではHBV DNAは2つの分子が互いに逆向きに接合しており, 1つの分子はC領域からX領域にかけて, 他の分子はS領域からX領域にわたる構造を有していた. 後者では内部に変異はなかったが, 前者においてはC領域内に255塩基対の欠失が生じていた. 宿主染色体との接合部は両者共同一, X領域内であり, さらに隣接する染色体DNAも少なくとも150塩基にわたり両側方向, 互いに逆向きに同一であった. 一方, 非癌肝細胞のクローンにおいては, 2つのHBV DNA分子が同じ向きに接合しており, 1つの分子はC領域からX領域にかけて, もう1つの分子はC領域の一部であった. 両者共, 内部には変異は認められなかった. 肝癌細胞クローンの構造は, HBV DNAが組込み後隣接する宿主染色体を巻き込んで増幅・組替えを起こすことを示唆する知見である. また, 非癌肝細胞クローンの変異構造は, 現在まで同様の報告はなく, 向後, 肝細胞においても, HBV DNAの組込みにより染色体の変異が起こっているか否かについて検討する予定である. 尚, 両クローンのHBV DNAに隣接する宿主DNAの塩基配列と, 既知の遺伝子塩基配列の相同性は, 現在DNAデータバンクを用いたコンピューター解析にて検索中である. また, 肝癌細胞に特徴的なHBV transcriptsについても解析し, 組込まれたHBV DNAの転写・発現についても検索中である.
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Research Products
(2 results)