Research Abstract |
慢性肝疾患患者の肝生検組織20例につき病理組織所見を検討した. 15例が慢性肝炎であり, 5例が肝硬変症であった. これらの症例について, secretary component(SC), CA19-9, 第VIII因子関連抗原(FVIIIRAg), OKM5, γエノラーゼおよびS100蛋白に対する各種抗血清を用いた免疫組織化学を行い, 光顕観察を行った. その結果, 以下のことを明らかにすることができた. 胆管上皮細胞にはSC, CA19-9が染色された. 肝硬変症では, SC, CA19-9陽性の増生胆管が門脈域に多数観察された. また, 門脈域では, FVIIIRAg陽性, OKM5陰性の血管内皮が増生していたが, 小葉内の類洞内皮は, FVIIIRAg陰性, OKM5陽性であり, 門脈域と小葉内では, 血管にHeterogeneityがみられた. しかし, 小葉内へ線維化が進展している部位の増生血管は, FVIIIRAg陽性, OKM5陰性となっていた. 拡大した門脈域では, S100蛋白, γエノラーゼ陽性の神経線維が増生していた. 肝硬変症では, S100蛋白, γエノラーゼ陽性の神経が線維性陽壁の中で増生していたが, 再生結節内にはほとんど観察されなかった. これらの神経線維は, FVIIIRAg陽性の血管およびCA19-9陽性の胆管に随伴しているのが, 重染色にて確認された. 以上, 慢性肝炎の際, piecemeal neceosisの組織修復として門脈域より小葉内への線維化の進展がみられるが, この現象は単に線維増生にとどまらず, 増生胆管, 増生血管および増生神経線維もその中に容れての線維化であると考えられた. 増生した血管・胆管およびそれらをregulateする神経線維も慢性肝疾患で小葉改築を生じてゆくことが光顕的に示されたが, さらに超微形態的検討を行うことにより, 慢性肝疾患における線維・血管・胆管および神経系の機能的関連について明らかに出来ると考えられる.
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