1988 Fiscal Year Annual Research Report
慢性肝疾患における肝小葉構築変化に関する免疫組織学的検討
Project/Area Number |
62570320
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Research Institution | Nagoya University School of Medicine |
Principal Investigator |
井本 正己 名古屋大学, 医学部, 助手 (10158769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 吉秀 名古屋工業大学, 保健管理センター, 講師 (40181284)
小山 泰生 名古屋大学, 医学部, 助手 (40192067)
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Keywords | 慢性肝疾患 / 免疫組織化学 / 線維化 / 小葉改築 |
Research Abstract |
昨年度、慢性肝疾患々者の生検肝組織において、piecemeal necrosisの部位の組織修復として、門脈域から小葉内への線維化の進展がみられるが、この現象は単に線維増生にとどまらず、増生した胆管、血管および神経線維も随伴していることを、免疫組織学的光顕レベルで明らかにしえた。本年度は、超微形態的手法をとりいれ、小葉改築に伴うこれらの形態学的変化について検討した。piecemeal necrosisの部位に出現した第VIII因子関連抗原陽性、OKM5陰性の血管内皮細胞は、基底膜を有し、内皮小孔は存在せず、既存の類洞内皮細胞とは超微形態的にも免疫組織学的にも異なり、門脈域血管の特微を有することがわかった。増生胆管は、secretory component.およびCA19ー9が陽性であり、既存の胆管と同様の免疫組織学的特微を有していたが、不規則な分岐と管腟の不整、狭窄がしばしば観察された。拡大した門脈域および小葉内へ侵入した線維組織中には、上記の増生した血管、胆管ともにSー100蛋白およびγーエノラーゼ陽性の神経線維が認められた。これらは、増生血管の周囲に主として観察された。神経線維の約半数は、NPY陽性であった。一方、VIP陽性線維は少く、小葉間胆管以上の太い胆管周囲に観察された。類洞被覆細胞と神経線維との関係をみると、リゾチーム、C_3b receptor陽性のクッパー細胞およびOKM5陽性の類洞内皮細胞には正常肝および病的肝のいずれにも神経支配は観察されなかった。正常肝では、伊東細胞の周囲に神経線維が存在し、類洞の血流調節は、伊東細胞を介してなされることが示唆されたのに対し、肝硬変症の再生結節内では神経線維が著しく減少もしくは欠如しており、微小循環障害の一因と考えられた。慢性肝炎から肝硬変症に進行するに従って胆汁分泌、代謝調節等の機能が障害されてゆくが、これは、線維化のみではなく、血管、胆管および神経線維の増生と分布変化によることが、明らかになった。
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[Publications] 福田吉秀,宮澤裕治,井本正己,小山泰生 他: 消化器と免疫. 20. 52-55 (1988)
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[Publications] 宮澤裕治,福田吉秀,井本正己,小山泰生 他: 消化器と免疫. 21. 91-93 (1988)
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[Publications] Yuuji,Miyazawa;Yoshihide,Fukuda;Masami,Imoto;Yasuo,Koyama et.al.: American Journal of Gastroenterology. 83. 1108-1114 (1989)