1987 Fiscal Year Annual Research Report
消化性潰瘍の原因に関する基礎的研究-主としてプロスタグランディンの面から
Project/Area Number |
62570334
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 洵三 大阪市立大学, 医学部, 教授 (70046928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 肇 大阪市立大学, 医学部, 助手 (60164323)
荒川 哲男 大阪市立大学, 医学部, 講師 (60145779)
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Keywords | プロスタグランディン / 胃粘膜被蓋上皮細胞 / 外因性PG / エタノール傷害 / 細胞保護作用 / 酵素抗体法 / PGE_2局在 / 壁細胞 / PGE_2生合成 / PGI_2生合成 |
Research Abstract |
ラット胃粘膜がプロスタグランディン(PG)を含有することを報告しているが, 本研究によりラット胃粘膜はおもにPGE_2を生合成し, 筋層はおもにPGI_2を生合成することが明らかとなった. このことは, おなじPGであっても合成, 作用する部位に違いがある可能性を示しているものと思われた. ラット胃粘膜被蓋上皮細胞を単離し, 細胞浮遊液を作成し, 外因性PGの細胞保護作用を単離細胞レベルで検討した. 細胞浮遊液に16,16-dimethyl PGE_2(dmPG)を添加し, 10分間の培養後エタノールを添加した. 5分後にトリパンブルー色素排泄試験により生存率を測定すると, dmPG無処置群ではエタノールの濃度が10,15,20%と増加するにつれ生存率は減少した. dmPG処置群では対照に比し, 10および15%のエタノールに対し有意に細胞傷害を抑制した. 細胞保護作用という現象はRobertが報告した概念であるが, その後, 組織学的に詳細に検討すると, 被蓋上皮細胞はPGでは保護されないことが明らかになり, 細胞保護作用の概念が一部修正されてきた. しかし, 本研究はPGが被蓋上皮細胞に対して直接的な保護作用を有することを示唆する結果としてひとつの重要な意義があると考えられた. ラット胃をグルタールアルデヒド加パラホルムアルデヒドで固定しOTCcompoundに包埋凍結し, クリオスタットにて凍結切片を作成した. 一次抗体として家兎抗PGE_2血清, 二次抗体としてビオチン化抗家兎IgGを用い, DABにて発色した. PGE_2の特異染色が腺底部および腺体部の下層に認められ, その細胞はおもに壁細胞であった. 主細胞の一部にも弱腸性の染色が認められ, また粘膜被蓋上皮細胞にも認められた. 本研究によりラット胃粘膜においては壁細胞が主としてPGE_2を合成している可能性が示され, 壁細胞の極めて重要な役割が示唆された.
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[Publications] 中村厚: 日本消化器病学会雑誌. 85. 296 (1988)
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[Publications] 樋口和秀: 日本消化器病学会雑誌. 85-5. (1988)
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[Publications] Takayuki MATSUMOTO: Gastroenterology.
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[Publications] 小林絢三: "胃粘膜とプロスタグランディン" ライフ・サイエンス, 126 (1987)