1988 Fiscal Year Annual Research Report
前頭葉性運動失調症の臨床放射線学的検討-ataxic hemiparesisとの関連について-
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62570358
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小島 重幸 千葉大学, 医学部・神経内科, 助手 (40170245)
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Keywords | 失調性片麻痺 / 交叉性小脳萎縮 / 皮質・橋・小脳路 / 大脳・小脳連関 / 多発性硬化症 |
Research Abstract |
運動機能における大脳・小脳連関に関与していると思われる交叉性小脳萎縮と失調性片麻痺を検討し、前頭葉性運動失調の発現機序について考察した。 1.交叉性小脳萎縮:一側の大脳脳血管障害の患者130例を対象とし、X線CTを用いて交叉性小脳萎縮の有無と大脳の病変局在との関係を検討した。交叉性小脳萎縮は130例中8例(6.2%)に認められた。8例の内訳は前頭葉と側頭葉を含んだ脳梗塞が6例で脳出血が2例(被殻1例と視床1例)であった。交叉性小脳萎縮の発現機序は皮質橋小脳路の順行性変性や小脳歯状核遠心系の逆行性編成が考えられているが、交叉性小脳萎縮が認められた8例中5例では、大脳病変側の大脳脚と橋底部の萎縮がみられたのに対し、小脳萎縮側の小脳歯状核の萎縮を示唆する第四脳室の拡大や変形はいずれの例でもみられなかった。以上の結果から、交叉性小脳萎縮の発現機序として、とくに前頭葉・側頭葉からの皮質橋小脳路の順行性変性が示唆された。なお、8例いずれも片麻痺が高度であったことから、臨床的な小脳性運動失調の評価は困難であった。 2.失調性片麻痺:MRI検査で一側の大脳脚の中央部に限局した脱髄巣を有し、病巣と反対側に失調性片麻痺を呈した多発性硬化症の2例を検討した。失調性片麻痺の発現機序は交叉性小脳萎縮と同様な機序や潜在性深部知覚障害の関与が考えられている。本例の病変はMRI上、大脳脚に限局し、上小脳脚交叉部や赤核には及んでおらず、小脳歯状核遠心系の関与は否定的であった。潜在性深部知覚障害の関与も、母指探し試験の結果や体性感覚誘発電位(SEP)の結果から否定的であった。失調性片麻痺は橋底部病変や内包後脚・放射冠病変が責任病巣と考えられているが、中脳の大脳脚病変によっても生じうるものであり、その機序として皮質橋小脳路の障害が考えられた。
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[Publications] 八木下敏志行: 脳卒中.
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[Publications] 桑原聡: CT研究. 10. 523-526 (1988)
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[Publications] Shigeyuki,Kojima: Neurology.
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[Publications] 平山惠造: "中枢神経疾患のMRI:運動失調" 中外医学社, 67-71 (1987)