1987 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症の病態発生と血液-脳-髄液関門の障害について
Project/Area Number |
62570371
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
竹岡 常行 東海大学, 医学部・内科, 講師 (90090026)
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Keywords | 多発性硬化症 / 血液-脳-髄液関門 / 病態発生 / 髄液免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM) / 蛍光抗体固相法 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)の脳脊髄液(髄液)のIgG濃度の増加はよく知られている. しかしIgAやIgM濃度については, その定量に高感度測定法が必要なためこれまで報告は極めて少なく, 注目されていない. 一方近年CTにてMSの血液-脳-髄液関門(BBFB)の障害が示唆されるにおよんで, MSにおける髄液中のIgGの由来や病態発生の理解に影響を生じてきた. MSの髄液IgSを定量して対照群と比較し, また各種指標との関係よりBBFBの状態を知ることを目的とした. 正常対照群18名(男13, 女5. 14〜55歳, 平均32歳). Poserらの診断基準を満し, 更にMRIにて頭蓋内に特徴的病巣を認めたMS7名(男1, 女6. 29〜67歳, 平均41歳). 罹病期間は1〜9年, 平均5.9年. Kurtzkeの障害度(EDSS)は3.5〜8.0平均6.0. 血液と髄液の細胞数, 総蛋白量(TP), アルブミン(A16), IgS(螢光抗体固相法)などを定量し比較した. 1.正常髄液の平均値(SD)はTP28.6(7.4)mg/dl;IgG,23.9(7.8)μg/ml;IgA,1.86(0.82)μg/ml;IgM,202(95)ng/ml. MSでは, 39.0(14.8);54.3(20.2);3.95(2.96);956(811)であり, いずれも有意に増加していた. A16や細胞数も上昇していた. 2.血液IgGとIgA値については両群間に差はないが, 血液IgMはMSで高い傾向があった. 3.MSでは髄液Alb値とIgAあるいはIgM濃度との間に正の相関が明らかであった. しかしIgGとの間には認められなかった. 4.罹病期間の長いほどEDSSは有意に高く, 髄液IgG値は高い傾向が認められた. しかし髄液IgAやIgM濃度と罹病期間やEDSSとの間に明らかな関係は認めなかった. これらの結果より, 髄液IgG値の増加の機序は, IgAあるいはIgM濃度のそれとは異なると考えられた. すなわち後二者ではBBFB障害による影響が推察されたが, 前者は他に別の因子も関与することが示唆された.
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[Publications] 竹岡 常行: 臨床神経. 26. 1439 (1986)
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[Publications] 竹岡 常行: 臨床神経. 27. 1690 (1987)
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[Publications] 竹岡 常行: 1988年5月,第29回日本神経学会総会.
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[Publications] 竹岡 常行: 臨床成人病.