Research Abstract |
1)ヒトパルボウイルスB19(以下B19と略)感染症の実態は不明であった. B19の抗原, 抗体, DNAを検索することにより, 次の病型においてB19の感染を証明した. 熱性疾患, 不定の発疹症, 紫斑病(血小板減少例と非減少例), 伝染性紅斑, 関節炎, aplastic crisis, 流産, 胎児水腫. 2)伝染性紅斑は患者からB19を検出できず病原決定に問題を残していたが, B19DNAの精細は検索により, 発疹発現後の患者から血液中, うがい液中にB19を検出できる例を見出した. 保健対策上重要な新発見である. 3)Aplastic crisisは, 検索した27名のうち26名が遺伝性球状赤血球症, 1名がG6PD欠損症(世界初)の基礎疾患を有していた. 時期は昭和56年のものがわが国で遡及したもっとも古い例となり, 地域的には北海道, 本州, 四国, 九州に発生し, 年度を超えた全国的問題であることを証明した. 4)母体の感染による胎児障害例は, 現在まで5例の死亡胎児から直接B19DNAを検出し, 母体感染を確認した例が2例あり, 地域は福岡, 大分, 大阪であった. 母体の感染症状の有無, 病型に関係なくB19は胎児に致死的影響を与える. この診断は決して容易でないことも明らかとなった. 5)血液製剤では某社の第9因子製剤中にB19DNAを確認した. 6)総括:B19感染症は病型が多く, 特定の人に危険で, 胎児に致死的に作用することを本邦で初めて証明した. 学校保健, 母子保健上重要なウイルス病であることを確認し, 今後診断法の一般化や感染対策等の問題が山積していることを明らかにした.
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