1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62570447
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大河原 章 北海道大学, 医学部, 教授 (50000964)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 仁 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (00153627)
|
Keywords | 乾癬 / 癌遺伝子 |
Research Abstract |
乾癬病巣の治癒機転とc-oncの動態 今年度の実験計画において、乾癬病変の治癒過程におけるc-onc発現き動態を、病変部から抽出したmRNAをNorthern blot法により解析することを計画したが、治癒した患者皮膚をmRNA抽出に足るだけ採取することは困難であった。このため計画を変更し、c-onc中最も乾癬皮膚において注目されたras遺伝子について、その遺伝子産物であるras p21き発現動態をその発症・治癒過程において詳しく検討した。 〈材料と方法〉皮膚試料:29例の乾癬患者から、無疹部皮膚、初期病変、完成病変、治癒病変を採取した。対照として臨床的に表皮肥厚の強いと思われるアトピ-性皮膚炎患者3例の苔癬化局面も採取した。antiras p21 MoAb:遺伝子工学的に合成されたras p21を抗原としてマウスハイブリド-マを作成(rp35)、マウス腹水を以下の免疫組織化学に使用した。免疫組織化学:皮膚試料の4μm凍結切片を作成しrp35,antimouse IgM-FITCと反応させたのち蛍光顕微鏡にて観察した。半定量的解析:rp35の段階希釈を行い、免疫組織化学的に陽性所見がえられる最高希釈倍数を求めた。 〈結果〉無疹部皮膚に比べ、初期病変部、完成病変部におけるras p21発現は明らかな差を示した。無疹部皮膚では基底細胞層のみ陽性であっだが、病変部両者共に表皮では有刺細胞層にも強い蛍光が認められた。PUVA,ステロイド外用、vitamin D_3外用後の病変部は正常皮膚と同様の所見であった。半定量的解析においてもこの差は明らかであった。一方アトピ-性皮膚炎患者の苔癬化局面部では、正常皮膚に比べ有刺細胞にも陽性所見が認められたものの、乾癬病変部との差は明らかであった。以上の結果から、乾癬表皮ては病変初期からras p21は活発に発現され、治療による病変の消褪と共にその発現の低下が起こることが確認され、さらに他の角化性疾患ではこの現象が見られないことが判明した。乾癬の病因はいまだ不明であるが、ras p21とGタンパクの類似性から、乾癬において指摘されている膜受容体から細胞質にいたる情報伝達経路の異常が、ras遺伝子の異常として捉えることができ非常に興味深い。
|
-
[Publications] 小林仁,他: "皮膚と癌遺伝子" 皮膚病診療. 11. 839-844 (1989)
-
[Publications] 小林仁,他: "ras geneと表皮細胞増殖" 日皮会誌. 99. 1350-1351 (1989)
-
[Publications] Kobayashi,H.,efal: "Epidermal growth factor receptor gene is not increased in psoriafic skin." J Dermatol. 17. 104-107 (1990)
-
[Publications] Yasuda,H.,et al: "Statistical and semiquankitative study of the expression of ras gene products in psoriatic epidermis."
-
[Publications] 大河原章: "表皮細胞と糖質" 医学のあゆみ. 150. 112 (1989)
-
[Publications] 大河原章: "今日の皮膚疾患治療指針" 医学書院, 470 (1989)
-
[Publications] 小林仁,他: "現代皮膚科学大系" 中山書店,