1988 Fiscal Year Annual Research Report
脳の老人性変化の生化学的性状と形成機序に関する研究
Project/Area Number |
62570488
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Research Institution | OSAKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西村 健 大阪大学, 医学部, 教授 (70028455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 雅俊 大阪大学, 医学部, 助手 (00179649)
多田 國利 大阪大学, 医学部, 助手 (80135681)
播口 之朗 大阪大学, 医学部, 助教授 (10028459)
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Keywords | 慢性脳虚血動物 / MAP2蛋白 / 実験的神経原線維変化 / カテプシンDグリア線維酸性蛋白 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
神経原線維変化の形成には、脳内細胞骨格蛋白の代謝異常が関与していることが強く示唆されているが、今回、アルツハイマー病脳内のライソゾーム酵素を定量し、蛋白分解酵素であるカテプシンDの活性が上昇していることを示した。カテプシンDによる細胞骨格蛋白の作用の検討から、生体内にニューロフィラメント蛋白がカテプシンDにより分解されてできたと考えられる約50kの分子量の分解産物が存在していることが強く示唆された。測定したライソゾーム酵素のなかから最も著明な活性の変化を示した脳カテプシンD酵素に対する抗体を作製し、カテプシンD酵素蛋白の変化と分布とを検索した。カテプシンD酵素は脳内神経細胞内に局存していたが、神経原線維変化や老人斑といったアルツハイマー病脳に特徴的な構造に多く集積するということはなかった。現在他の蛋白分解酵素・蛋白分解酵素の阻害剤に対する抗体を用いて、同様の検索を続けている。 一方、グリア線維酸性蛋白の変化に関する実験から、アルツハイマー病患者血清中には、グリア線維酸性蛋白に対する抗体値が上昇していることが明らかになった。このグリア線維酸性蛋白に対する抗体値の上昇は、脳血管性痴呆患者では認められず、老年期にみられる痴呆症の臨床的鑑別に役立つものと考えられる。現在、グリア線維酸性蛋白に対する抗体値の上昇の機序が、免疫反応系の変化によるものか、クリア線維酸性蛋白自体の変化によるものかの検討を進めているが、現在までの結果からは、アルツハイマー痴呆の病態の発現にグリア線維酸性蛋白の変化が関与していることが示唆されている。
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[Publications] HIDEO SUZUKI: Neurosci.Lett.89. 240-245 (1988)
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[Publications] HIDEO SUZUKI: Neurosci.Lett.89. 234-239 (1988)
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[Publications] JUNYA TANAKA: Biomedical Res.9. 209-216 (1988)
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[Publications] HISAYOSHI NIIGAWA: Brain Research. 459. 183-186 (1988)
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[Publications] TAKASHI KUDO: Brain Research.
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[Publications] YU NAKAMURA: Neuroscience Letters.
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[Publications] 西村健: "細胞骨格タンパクの異常、老人痴呆症と脳機能改善薬" CMC出版, 12 (1988)
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[Publications] 武田雅俊: "細胞骨格の異常、アルツハイマー型老年痴呆(最近の知識)" 藤田企画出版, 14 (1988)