1988 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄県における精神障害者による重大犯罪の実態とその対策
Project/Area Number |
62570492
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
國元 憲文 琉球大学, 医学部, 助教授 (70144665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 潔 琉球大学, 医学部, 助手 (10189847)
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Keywords | 精神障害者 / 重大犯罪 / 殺人 / 発生頻度 / 精神科治療 / 犯行動機 / 精神科医療 / 社会文化的背景 |
Research Abstract |
沖縄県において、一般人口における犯罪発生率を全国のそれと比較すると、犯罪白書などで公表されているところでは、かなり高率を示している。精神障害者の犯罪発生率も、一説によると全国平均の3.5倍に達するとされている。そこで、沖縄県における精神障害者による重大犯罪の実態を明らかにする事によって、その予防を精神医学の側面から考察することが、本研究の目的とされた。 昭和62年度には、まずその実態の把握が中心になされ、昭和58年から昭和61年までの4年間に、精神障害者による重大犯罪は、未遂も含めて103件が発生していた。そして、沖縄県における精神障害者による犯罪の特徴として、未治療のものによる犯罪は低率である反面、治療中断者によるものが多い事を明らかにした。 昭和63年度は、さらにケースごとの具体的データを調査するために現地に赴き、あるいは主治医に意見を聴き、全国的な調査資料との対比を行うなど、資料の整理集計をして、犯罪発生の背景を把握した。 それによれば、昭和60年から昭和62年までの3年間に、精神障害者による殺人(未遂を含む)のみについてみると、24件が発生しており、被害者の約80%は家族であった。病名別に見ると、精神分裂病58.3%、うつ病12.5%、その他であり、精神科治療との関係では、通院中・入院中を合わせた治療中のものが66.7%、治療中断20.8%、未治療12.5%であった。殺人の動機は、幻覚・妄想など精神症状に基づくものが41.7%を占め、心中29.2%、口論25.0%などであった。 殺人のみに限ると、治療中のものが多いにもかかわらず、その精神症状を原因として犯罪が発生しており、日常診療のあり方に関して、さらに検討し、工夫する必要性が有ろうと思われる。なお、予測危険因子の分析からの危険度評価については、今後の課題としたい。
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