1988 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモン及び神経ペプチドとしての心房性ナトリウム利尿ポリペプチドの意義及び臨床応用
Project/Area Number |
62570512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 一和 京都大学, 医学部第2内科, 助手 (00172263)
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Keywords | 心房性ナトリウム利尿ポリペプチド / ホルモン / 神経ペプチド |
Research Abstract |
I.ホルモンとしてのANP: 全身に血液を駆出するポンプ器官としてのみ考えられてきた心臓よりANPが発見されて以来、内分泌臓器としての心臓、ANPの生理的、病態生理的意義及びANPの臨床応用が注目されている。我々はANPの単離同定に続き、ANPの抗血清を世界に先駆けて調整し、それをラジオイムノアッセイ(RIA)や免疫組織化学に応用して、ANPが体液量、血圧調節に関与するホルモンであることを報告してきた。更に、異なるエピトーフを認識する数種のモノクローナル抗体の開発に成功し、またNorthern blot法などの分子生物学的手法も用いて、心臓におけるANP生合成や分泌機構について検討し、内分泌臓器としての心臓は従来の内分泌臓器と異なる幾つかの特徴を有することを明らかにしてきた。特に高血圧や心不全などの病的心臓では、心房のみならず心室でも著しいANP遺伝子発現の亢進が認められること、これが高血圧や心不全の病態生理に関与していることを証明してきた。さらに、このANP遺伝子発現の亢進は病的心臓の自己代償反応であることを指摘するとともに、この成果を踏まえたANPの臨床応用を試み、ANPが臨床的にも薬剤として有効であることを報告した。また、ラジオイムノアッセイ(RIA)の約100倍の感度を有するANPの超高感度酵素免疫測定法の開発にも成功し、高血圧や心不全、腎不全等の診断手段としての臨床応用の可能性を指摘してきた。II.神経ペプチドとしてのANP: また我々は、ホルモンとしてのANPの研究のみならず、ANPが中枢神経系において体液量、血圧調節に重要な役割を有すると考えられてきた視床下部前腹側部(AV3V)に高濃度存在することを明らかにし、さらにその後の検討により、神経ペプチドとしてのANPとホルモンとしてのANPは分子型が異なること、中枢神経系では飲水、食塩嗜好性、血圧、バゾプレッシン分泌、ACTH分泌に抑制的に作用していることを明らかにしてきた。ANPはホルモンとしてのみならず、神経ペプチドとしても体液量および血圧調節に関与している。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hiroshi Arai,et al.: Circulation Research. 62. 926-930 (1988)
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[Publications] Akira Sugawara,et al.: Journal of Clinical Investigation. 81. 1962-1970 (1988)
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[Publications] Hiroshi Itoh,et al.: Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 67. 429-437 (1988)
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[Publications] Yoshihiko Saito,et al.: Journal of Clinical Investigation. 83. 298-305 (1989)
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[Publications] Hirofumi Yasue,et al.: Journal of Clinical Investigation. 83. 46-51 (1989)