1988 Fiscal Year Annual Research Report
胃切除後患者における代謝性骨障害の発生機序並びに骨障害に対する薬物療法の効果
Project/Area Number |
62570597
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小沢 邦寿 帝京大学, 医学部, 助教授 (90192054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永嶌 嘉嗣 帝京大学, 医学部, 講師 (80198324)
和田 信昭 帝京大学, 医学部, 教授 (80092386)
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Keywords | 胃切除術 / 骨代謝障害 / ビタミンD / 術後消化吸収障害 / カルシウム代謝 |
Research Abstract |
帝京大学市原病院で胃全摘術を受け、外来通院中の患者10名について、血中ビタミンDのの代謝産物の濃度の最も低下する冬期に、ビタミンDの主要な代謝産物の血中濃度と、骨代謝に関係する生化学的検査、MD法による骨萎縮の程度の測定を、平成元年2月及び3月に実施した。その結果、血中25(OH)ビタミンD値は9.0±5.8ng/ml(mean±SD、正常値10ー55ng/ml)、24、25(OH)_2ビタミンD値は1.0±0.5ng/ml(正常値1.8ー3.8ng/ml)、1.25(OH)_2ビタミンD値は36.6±12.3pg/ml(正常値20ー76pg/ml)であった。血中カルシウム、リン、アルカリフォスファターゼ、PTA値には異常値を認めなかった。 MD法による骨量の測定結果では、8名が正常で、2名に骨萎縮の初果的変化を認めたが、血中ビタミンD値の異常との相関は見られなかった。また腰痛、関節痛などの自覚症状の訴えは見られなかった。これらの結果より、手術後3年以内の早期より胃全摘後患者においては、体内ビタミンDの貯蔵量の低下が見られるものの、活性型ビタミンDである1.25(OH)_2ビタミンD値は正常域に保たれており、急激な骨代謝異常を来たすことは稀であると考えられた。昭和62年度の検査値を比較すると、手術後期間の経過に伴ない、生化学的なビタミンD代謝障害の発現の頻度が増加している傾向が見られ、これが長期にわたって続けば、最終的には骨萎縮を紹来する可能性が高いと考えられる。今回検査した患者はいずれも手術後期間が3年以内と短かいため、ビタミンD欠乏症の臨床症状や、実際の骨量の減少は見出せなかったが、今後長期にわたる骨代謝障害の検索が必要であると考えられた。
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