重症急性膵炎における多臓器障害の発生機序-特にlipid peroxideの関与について-

1987 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62570603
• Research Institution: Mie University
• Principal Investigator: 川原田 嘉文 三重大学, 医療技術短期大学部・設置準備調査室, 教授 (40024814)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 岡村 一則 三重大学, 医学部, 助手 (50194387)
• Keywords: 急性膵炎 / 多臓器障害 / 過酸化脂質 / PhospholipaseA_2 / PLA_2 inhibitor / Free radical scavengers

Research Abstract

1.【目的・方法】急性膵炎における多臓器障害の発生機序につき, 特に過酸化脂質の関与について検索した.
A.腎・肺障害の発生機序:
1)実験的急性膵炎:犬の膵管内に自家胆嚢胆汁を注入して膵炎を作成した後, 腎・肺静脈血中過酸化脂質(TBA)を測定し, 肺及び腎の各種機能を検索する.
2)腎・肺動脈内各種膵酵素注入実験:犬の腎又は肺動脈内に各種膵酵素を単独, 又は混合して持続動注し, 実験的急性膵炎と同様の検索を行った.
B.各種阻害剤の効果:実験的急性膵炎にてPLA_2inhibitor(CDP-choline,hydrocortisone)やfree radical scavengers(SOD,cat-alase,vitamineE)を経静脈的に投与し, 腎肺障害, 生存期間, 血中PLA_2活性, 血中TBAについて検討した.
2.【成績】A.腎障害の発生機序:
1)実験的急性膵炎では膵炎作成直後より血中TBAの上昇及び急激なcreatinine clearance(Ccr)の低下と尿中尿細管逸脱酵素の上昇を認めた.
2)腎動脈内各種膵酵素注入実験ではPLA_2注入にて血中TBA並びに尿中尿細管逸脱酵素の上昇と, trypsin注入でのCcrの著明な低下が認められ, 膵性PLA_2とtrypsinによる腎障害に加え, 過酸化脂質反応も加わって著明な腎障害を惹起するものと考えられた.
肺障害の発生機序:1)実験的急性膵炎では膵炎作成後PaO_2の著明な低下とQs/Qtの著増を示した. 血中FFA, リン脂質, TBAは肺静脈血中(PV)が肺動脈血中(PA)より有意な上昇を示した.
2)肺動脈内各種膵酵素注入実験ではPLA_2注入により, 実験的急性膵炎と同様にPaO_2の低下とQs/Qt上昇を示し, また血中FFA, リン脂質, TBAもPV中で著明に上昇した. 以上より膵性PLA_2による肺胞surfactantの障害や過酸化脂質反応による肺毛細血管の障害が考えられた.
B.各種阻害剤の効果:CDP-choline,hydrocortisoneの各投与群では夫々, 非投与群に対し, 腎肺障害は軽度で, 生存期間の有意の延長を認めた. また血中PLA_2活性やTBAも低値を示した. 今回はSOD投与のみであったが, 投与群では非投与群に比し, 血中TBAの有意の低下を示し生存期間の延長する傾向を認めた.

Research Products

• [Publications] 水本龍二: 臨床科学. 23. 534-541 (1987)
• [Publications] 水本龍二: 肝胆膵. 15. 15-25 (1987)
• [Publications] 水本龍二: 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班昭和61年度研究報告書. 81-87 (1986)