1987 Fiscal Year Annual Research Report
外科的消化器疾患における必須微量金属元素-とくに消火器悪性疾患とセレニウム代謝について-
Project/Area Number |
62570621
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
山村 学 関西医科大学, 医学部, 講師 (60077732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 吉則 関西医科大学, 医学部, 助手 (00172982)
上辻 章二 関西医科大学, 医学部, 講師 (20148505)
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Keywords | セレニウム / 消火器癌 / 値中セレニウム / 組織セレニウム / 低セレニウム血症 |
Research Abstract |
セレニウム(Se)は生体の必須微量元素の一つであり, 疫学的研究によると消化器癌死亡率は土壌中のSe濃度の地理的分布や血清中のSe濃度と逆相関を示すと報告されている. 又癌患者の血中Se濃度は他の患者に比し有意に低値を示すという報告もある. そこで担癌体におけるSe代謝異常の存在について当科で手術を施行した消化器癌(食道癌8例, 胃癌36例, 結腸・直腸癌23例)の67例を対象に術前血中Se濃度及び手術切除組織Se濃度を測定した. また, 外科的良性消化器疾患12例, 内科的疾患12例及び健常人10例の34例においても同様にWatkinsonの変法にて測定した. まず4群の背景因子をみると外科的疾患と内科的疾患及び健常人との間で年令, ヘモグロビン, アルブミンに有意差を認めたが消化器癌患者と外科的消化器疾患患者との間には有意差は認めなかった. しかしながら悪性腫瘍患者の血中Se濃度は癌組織で平均9.34μg/dlと他の3群(それぞれ12.34, 12.16, 12.83μg/dl)に比し有意に低値を示した. さらに消化器癌患者の切除組織Se濃度は癌組織で平均0.233μg/gであったのに比し肉眼的健常部では0.180μg/gと有意に低値を示した. 一方対照として測定した消化性潰瘍患者の健常部胃粘膜Se濃度平均0.288μg/gに比し両者共有意に低値であった. 癌患者血中及び組織中Se濃度と癌の臨床的進行度との関係について検討したところ血中Se濃度は癌の進行に伴って低下傾向を認めたが, 組織Se濃度には癌組織及び健常部粘膜ともに有意の相関は認められなかった. 以上消化器癌患者では血中および組織中Se濃度は低値を示すことが明らかとなったがこれが消化器悪性腫瘍の原因であるのか結果であるのか更に検討が必要である.
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