1988 Fiscal Year Annual Research Report
治癒促進効果をもつ大動脈用低有孔性柔軟壁人工血管の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
62570638
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野一色 泰晴 岡山大学, 医学部, 助手 (60033263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 有一 東レ株式会社, 基礎研究所, 主任研究員 (10288003)
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Keywords | 人工血管 / 内皮細胞 / 平滑筋細胞 / 線維芽細胞 / 超微細ポリエステル繊維 / 新生血管壁 / 石灰化 |
Research Abstract |
布製人工血管を植え込むと内面に血栓が付着する。血流、血圧の状態が良好であれば、この血栓層は2mm以下の厚さでとどまり、それ以上厚くはならない。そして時間の経過とともに血栓層内へ宿主の線維芽細胞や平滑筋細胞等が侵入し、その表面には内皮細胞が出現し、全表面を覆う。内皮細胞には天然の抗血栓性があるので、この経過を経たのち、人工血管は抗血栓性を獲得する。この過程は動物実験ではよく観察されるがヒトにおいてはその治癒は著しく遅れ、時にはいつまで経過しても治癒しないこともあるため、治癒促進効果をもつ人工血管の開発が望まれていた。本研究ではこの不便さを解消するため、従来の太さの1/100程度の極めて細い超微細ポリエステル繊維で作られた布を用いて人工血管を作成し動物実験を行って、その特性を明らかにするとともに、新生血管壁を形成する平滑筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞等の挙動を観察し、治癒促進効果をもつ大動脈用低有孔性柔軟壁人工血管の開発のための基礎的資料を得た。作成した人工血管は低有孔性であっても非常にしなやかで天然の血管壁の如き軟らかさがあった。従って、現在臨床で用いられている低有孔性人工血管に比べ、扱い易く、手術も容易であった。現在本研究は最終年度に当り、2年間経過し、この間に長期間観察した実験動物を得た。これから得られた試料の解析の結果、目標とした高治癒性が得られていることが明らかとなった。従来のポリエステル繊維(断面直径20ミクロン)比べ極めて細かいポリエステル繊維上には、新生血管壁を構成する線維芽細胞や平滑筋細胞が活発に侵入し、増殖しており、さらにその表層を内皮細胞が覆って、急速に新生血管壁が形成されてゆく所見が得られた。このことは、繊維を細くすることによって人工血管をしなやかにして扱い易くすると同時に、新生血管壁の治癒をも促進していることが判明した。低有孔性でそれが観察されたことは意義深い。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Takafumi Okoshi,;Yasuharu Noishiki,;Yasuko Tomizawa,;Masae Morishima,;Hitoshi Koyanagi.: Tranasctions of American Society for Aetificial Internal Organs. 34. 532-537 (1988)
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[Publications] Shinichi Satoh,;Satoshi Niu,;Hideji Shirakata,;Tkahiro Oka,;Yasuharu Noishiki.: Tranasctions of American Society for Aetificial Internal Organs. 34. 655-660 (1988)
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[Publications] Yasuharu Noishiki,;Yoshihisa Yamane,;Masayasu Furuse,;Teruo Miyata.: Tranasctions of American Society for Aetificial Internal Organs. 34. 308-314 (1988)
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[Publications] 野一色泰晴: 細胞. 20. 208-212 (1988)
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[Publications] 野一色泰晴: BIO medica. 3. 709-713 (1988)
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[Publications] 野一色泰晴: 手術. 32. 1533-1540 (1988)
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[Publications] 野一色泰晴: "Annula Review循環器1989"抗血栓性人工血管"" 中外医学社, 233-240 (1988)
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[Publications] 野一色泰晴: "器官形成発生生物原から臓器工原まで"血管人工血管における血管壁形成"" 培風館, 215-221 (1988)