1988 Fiscal Year Annual Research Report
実験的頭部外傷における局所糖代謝および循環の研究。外傷脳の局所糖代謝異常亢進
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62570648
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山浦 晶 千葉大学, 医学部, 助教授 (40009717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村井 尚之 千葉大学, 医学部, 医員
中村 孝雄 千葉大学, 医学部, 助手 (70155836)
牧野 博安 千葉大学, 医学部, 教授 (10009095)
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Keywords | ラット / Fluid percussion法 / 脳挫創 / 細胞外カリウムイオン / 直流電位 / spereading depression / 低酸素 |
Research Abstract |
Fluid percussion法によりラットの左頭頂葉下部に脳挫傷を作成し、脳代謝異常亢進状態の起こる2時間を中心に以下の観察をし、新たな知見をえた。 1.イオン選択性ガラス微小電極、および微小電極用電圧増幅機を用い、Wistar rat雄、11匹において脳挫傷辺縁部の細胞外カリウムイオン濃度およびDC-potential(DC)を測定した。5匹においてはDCの偏位は観察されず、細胞外カリウムイオン濃度は2〜4mEqで変動は僅かであった。DCの偏位が観察された残りの6匹のうち、3匹においては細胞外カリウムイオン濃度の一過性の上昇がおよそ30mEq以下で繰り返すにとどまった。しかし、3匹においては挫傷作成後それぞれ30分、40分、67分にDCの陰性偏位とともに急激に上昇し約60mEqと高値となり、30分以上持続し2時間目でも正常値に戻らなかった。細胞外カリウムイオンの一過性の上昇は、健常な大脳皮質におけるspreading depression(SD)時の変化に類似したがdurationが長かったり上昇と上昇の間に基線まで戻らないなどエネルギー状態の悪化が示唆された。また、約60mEqまでの急激な細胞外カリウムイオン濃度の上昇と持続は、測定部位の神経細胞が死ぬ過程を捉えたものと思われる。 2.脳挫傷作成後6匹に低酸素負荷を加えてDCの変化と動脈血酸素分圧の関係を検討した。6匹中4匹において低酸素負荷を加えると1〜2分以内にDCの陰性偏位が誘発された。陰性偏位の発生頻度と動脈血酸素分圧との間には一定の関係は得られなかったが、酸素分圧の低いものほど陰性偏位からの回復が遅延する傾向があった。 以上の結果から脳挫傷辺縁部はエネルギー状態が悪化しており、この様な状態では、動脈酸素分圧の低下は容易に膜の恒常性の破綻につながり細胞環境は悪循環に陥ると考えられる。
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