1988 Fiscal Year Annual Research Report
悪性グリオーマ患者に対する抗癌剤有効性の新しい評価法
Project/Area Number |
62570649
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
小林 秀 東京都老人総合研究所, 生理学部臨床第二研究室, 研究員 (30161988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 博彦 東京大学, 付属病院脳神経外科・文部教官, 助手 (30189055)
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Keywords | 姉妹染色分体交換 / グリオーマ / リンパ球 / 抗癌剤 |
Research Abstract |
前年度において、健常人から採取したリンパ球でPHAで賦活化し測定したSCE頻度は、(SCE:Sister chrnuitid exchomge妊娠染色分体交換)7.6±0.2/細胞であり、試験管内で投与した抗癌剤ACNVによりSCEが直線的に増加することを示した。ACNV3.0μg/ml2時間投与で、SCEは35.2/細胞に増加した。また、ACNV投与後に、薬剤を含まない培養液中に保つことにより、誘発SCE数の減少を認めた。(傷害からの回復)。今年度は、主にグリオーマと病理組織診断されACNV投与による治療を受けている患者(8名、計13回)の末梢血リンパ球誘発SCEを測定した。ACNV投与後1日〜最長75日にわたって誘発SCEの顕著な増加を示した。ACNV投与前6.3〜9.1/細胞のSCEが、投与後17.0〜46.9/細胞に増加した。ACNV投与後日数の少ない時点でのSCE数の方が、日数の多い時点よりSCE数が多い傾向を示した。なかには、ACNV投与後2ヶ月半でも高いSCEを示す症例もあった。以上は、ACNVの経静脈投与の結果である。ACNVの脳脊髄液腔投与でも、SCEの軽度増加(11.7〜16.4SCEs/cell)を示したが、放射線照射による誘発SCEの増加は認めなかった。以上の結果は、in vitroにおけるACNVの効果とin vitroにおける変化がよく相関していることを示す。ACNVを投与されているグリオーマ患者のリンパ球誘発SCEを測定することにより、ACNVによるリンパ球のDNA傷害が鋭敏に捉えられた。リンパ球誘発SCE数の測定は、正常細胞傷害の一指標として臨床的に有用と考えられる。 ラットC_6グリオーマ細胞株のSCEは、培養下に投与したACNVにより濃度依存性に増加した。SCEの増加は、コロニー形成能試験によるACNVの殺細胞効果とよく相関するが、SCEの方が軽微な変化まで捉えることができた。手術材料から得たグリオーマのearly passage cultureを用いた、SCEによるACNV有効性の評価を試みたが、遅い発育速度や細胞のheterogeneityのため困難であり、今後の課題として残された。
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[Publications] 西川亮、小林秀、高倉公明: Newo Medico Chirur.
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[Publications] 小林秀、吉川宏起、高倉公明、飯尾正宏: CT研究. 10(4). 389-395 (1988)
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[Publications] 小林秀: " 「脳腫瘍-化学療法」 癌治療学(上)(日本臨床1988年増刊)" 日本臨床社, (463-468)1072 (1988)
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[Publications] 小林秀: "「化学療法への応用-セルソーティングの応用」フローサイトメトリー改訂第2版" 蟹書房, (567-575)818 (1988)