1988 Fiscal Year Annual Research Report
低濃度吸入麻酔薬の高次神経機能の定量的比較(麻酔状態の定義と関連して)
Project/Area Number |
62570702
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 正晴 大阪大学, 医学部, 助手 (10210220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 正昭 大阪大学医療技術短期大学部, 教授 (20027965)
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Keywords | 低濃度吸入麻酔薬 / 疼痛閾値 / 音反応時間 / MAC |
Research Abstract |
笑気の耐性については比較的短時間で耐性が生じるとの報告がある。また笑気の作用に対するナロキソンの拮抗の有無についても調べた。笑気の特に鎮痛作用に関してはオピエイト系の関与が考えられており、オピエイトの拮抗薬であるナロキソンで拮抗されるとの報告もある。但し、笑気の耐性形成、ナロキソンの拮抗に対しては共に異論がある。6名の健常成人男性を被験者として笑気の鎮痛および麻酔作用に対する耐性形成の有無を調べた。またナロキソンの笑気の作用に対する拮抗作用もみた。鎮痛作用は中浜式疼痛計による疼痛閾値で、麻酔作用はパソコンを用いた音反応時間で測定した。吸入前値を測定後、笑気を100分間吸入させ吸入終了60分後まで、疼痛閾値、音反応時間共に15分間隔で測定し、経時的変化をみた。ナロキソンは30分おきに合計1.4mg投与した。被験者1名につき笑気投与の有無、ナロキソン投与の有無の4通りの組合せで4回の試行を行った。100分間の30%笑気吸入では麻酔作用、鎮痛作用共に耐性は生じなかった。ナロキソン投与により麻酔作用、鎮痛作用共に笑気に対する拮抗は認められなかった。この結果より、ヒトでは笑気の耐性は短時間のうちに画一的に生じるものではなく、またナロキソンは笑気に対してはオピエイトに対する様な拮抗作用を有さないと考えた。しかし、この実験でも笑気投与例では笑気吸入終了に伴い音反応時間は速やかに回復したが、疼痛閾値は吸入終了30分後まで上昇していた。このことから笑気の疼痛作用は何らかの生化学的影響を受けていることが示唆された。また笑気非投与の場合、測定回数につれて疼痛閾値が上昇しhabituationが生じたが、ナロキソン投与例ではみられず、habituationとオピエイト系との関連が考えられた。
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