1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62570710
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小川 節郎 日本大学, 医学部, 講師 (80096792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 卓 日本大学, 医学部, 助手 (60246907)
三国 悦子 日本大学, 医学部, 助手
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Keywords | 痛み / 神経線維 / 選択的神経遮断 / 神経生理学 / 局所麻酔薬 / 塩酸ジブカイン |
Research Abstract |
疼痛伝達に関与する神経線維であるA_δ線維、C線維の選択的伝導遮断を見い出し、痛みの治療に応用することを目的として研究を行っている。このため今年度は局所麻酔薬の内、神経毒性が強く作用時間も長い塩酸ジブカインについて実験的研究を行った。実験はウサギから取り出した頚部迷走神経を用い、電気刺激-活動電位導出用電極に固定した後、重炭酸イオンとブドウ糖を含み、かつ5%炭酸ガスを含む酸素で飽和したリンゲル氏液中でこの神経をインキュベ-トした。神経の興奮性の測定は、経時的に電気刺激を与えることにより導出された複合活動電位の振幅を指標とした。この複合活動電位は潜時の早い順にA_β2線維成分、A_δ線維成分およびC線維成分であると同定されている。今回はこの内、A_β成分とC成分に対する効果を比較検討した。塩酸ジブカイン濃度は1×10^-4〜3×10^-1%までを数段階に分けて実験した。 以上の結果、まず塩酸ジブカインを作用させてから神経の興奮性が敢然に遮断されるジブカインの最低濃度はAβ成分で1×10^-1%、C成分では3×10^1-41%であった。これらの濃度ではその後に神経の興奮性の回復が認められた。次に、一度遮断された神経の興奮性の回復が全く認められなかった濃度については、A成分では3×10^-3%、C成分では3×10^-21%であった。以上より、塩酸ジブカインは疼痛伝達神経線維ではないA_β線維に対し、C線維よりも強い遮断作用を持つことが明らかになった。この結果は、当初の目的とは逆の結果になったが、塩酸ジブカインが強い神経毒性を持つことが実験的に証明、再確認され、臨床上、神経破壊剤として使用され得ることが明らかになった。この結果についての論文は現在作製中である。 現在、C線維に対し選択的抑制効果があると考えられているビタミンB_12の内メチコバラミンにつき同様な実験方法で研究をすすめている。
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