Research Abstract |
男子不妊症患者の精巣生検組織を用いて, 精巣内によび精細管内testosterone(T)および5α-dihydrotestosterone(DHT)を測定し, 以下の如き結果を得た. 1.精巣内T, DHTと精細管内T, DHTとの間に密接な関連性はなく, DHTは一部精細管内でTより転換されることが示唆された. 2.血中LH, FSHと精細管内T, DHTとの間にも相関はみられず, LH, FSHが高値であっても, 即ちheydig細胞が十分作動していても, 精細管内にTあるいはDHTが移行しない症例が存在すると考えられた. 精細管内androgen receptor(AR)をmicroreceptor assayにて, その最大結合部位数を測定し, 以下の如き結果を得た. 1.乏精子症を呈する精索静脈瘤患者に大量のHCG負荷(1日量4000単位, 3日間筋注)を行い, ARを測定したが, HCG刺激による精細管内Tの増加とともにARも増加することを認めた. 2.特発性不妊症におけるARの検討で, 一部症例にAR低値が認められたが, AR欠損例は存在しなかった. このことより, 男子不妊症では精巣女性化症の如きAR欠損例は存在しないが, AR低値例が存在し, このような症例あるいは前述したT, DHTの精細管内移行の不十分な症例に対しては, 精細管内T, DHTを著明に増加させる精巣内弾性ホルモンペレット移植療法が適応となることが推察された. ラットにAdriamycinを6週間皮下投与し, その後の精巣所見を対照群と比較検討したが, 精細胞の著明な減少を認め, 不妊ラットの作成に成功した. しかし, T, DHTペレット移植に際し, 外科的操作による精巣障害を来したため, 今後はT, DHTのmicrocrystal suspensionを作成し, 研究を続ける予定である.
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