1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62570788
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 清志 金沢工業大学, 工学部, 助教授 (10114638)
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Keywords | 基本周波数 / 韻津 / 筋電図 / 輪状甲状筋 / 側輪状破裂筋 / 輪状喉頭筋 / 喉頭 |
Research Abstract |
本年度は、輪状甲状筋の直部と斜部の基本周波数(FO)制御における作用の相違を推定するとともに、種々の喉頭筋の作用を統合してFO調節における生理学的モデルを考案した。 輪状甲状筋は輪状軟骨の前方外側より甲状軟骨体部の下縁に走行する筋であり、収縮により輪状甲状関節の回転を生じ声帯の伸張がもたらされると考えられている。この筋は解部学的に直部と斜部に分れ、直部が回転運動を、斜部が滑り運動をひき起こするされるが、滑り運動の可能性については疑問視されている。そこで各部のFO上昇作用を推定した。 直部は甲状軟骨の筋付着部が関節の回転中心より遠く、十分な回転力を期待できる。しかし、筋長が短いため最大収縮により弛緩時の70%に短縮しても、声帯の伸張は10〜15%と小さく、約1オクターブのFOの変化を生じるのみである。斜部は回転中心に近接しており大きな回転力は期待できないが、滑り運動ばかりでなく甲状軟骨下角の弾性変形ににより軟骨間の偏位を生じる可能性があり、5〜10%の声帯の伸張が得られる。これらの2つの作用を統合しても、FOの変化は2オクターブ弱であると推定される。従って、人間の生成し得るFOの帯域を説明することはできず、その他の補助機構が存在することが示唆される。 昨年度の研究結果である側輪状破裂筋と輪状咽頭筋のFO調節作用も含めて喉頭筋によるFO調節のモデルを考案した。FO上昇時には、輪状甲状筋による声帯張力の増大と側輪状破裂筋による声帯振動長の短縮とにより制御され、FO下降時には、輪状咽頭筋の収縮と喉頭の下降により、声帯の張力の減少が生じ、声帯の内転力が減少することにより声帯の振動長が増大する。
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