Research Abstract |
高リンパ節転移細胞HSC3LMF4により免疫されたBALB/Cマウスの脾臓と, マウスマエローマNS-1との細胞融合により得られたハイブリドーマの培養上清に対し, EL, SA法にてスクリーニングした結果, LMF4細胞に陽性, 正常ヒト線維芽細胞に陰性を示したものが現在までに6種類得られた. これらのハイブリドーマにクローニングを繰り返し, その培養上清を用いて, 口腔扁平上皮癌組織, 正常に腔粘膜の凍結切片に対しABC法にて組織学的検索を行った. 3A1は, 扁平上皮癌では癌胞巣辺縁部, 正常上皮では基底層に陽性所見を示した. 8A12は, 癌胞巣周囲から胞巣, 細胞質に反応するものまで見られ, 正常上皮ではやはり基底層と反応していた4D11は癌真珠周囲との反応が見られたが, 正常上皮では陽性を示す部位は見出せなかった. 10B2は癌胞巣周囲を環状にとりまいて結合し, また基底膜に結合した. 11A8は癌真珠, 角化巣から有棘層, 基底層に至る粘膜上皮全体に反応を示した. 12E9は癌真珠, 基底層に結合した. 以上の組織学的検索から, 細胞レベルでは, 3A1, 8A12, 10B2は扁平上皮癌細胞を認識し, また正常上皮の基底細胞を認識するといえる. しかし組織切片上におけるそれぞれの抗体の染色の度合や位置は異なっており, 10B2における環状の結合状態は, 細胞表面抗原の認識を思わせ, また, 8A12の抗原は細胞質内に存在することを思わせる所見であった. これに対し, 4D11, 11A8, 12E9においては角化細胞や上皮成分に陽性のため分化度の高い扁平上皮癌は認識し得る. 高転移性の癌は一般に高分化型より低分化型に多いため, 角化性の明らかな高分化癌を認識する役者よりも, 癌細胞自身を認識する前者の抗体が以後の研究に有用であると考えられる.
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