Research Abstract |
【目的】生理活性な白金錯体の一つであるシスプラチン(CDDP)は, 優れた制癌作用を有し, 広く臨床使用されている. 一方, チオ硫酸ナトリウム(STS)は, CDDPの副作用を低減する試剤として注目されている. 著者等は既に, ウサギにおいてSTSの併用投与によりCDDP体内動態が変化することを見いだし, 生体内でCDDPとSTSが反応する可能性を指摘した(11.研究発表参照参照). そこで, CDDP及びSTSの最適投与法の確立並びにSTSの作用機序解明の観点から, 本研究では, 高速液体クロマトグラフィー(GPLC)によるCDDP-STS反応生成物の分析法の確立並びにこれらに反応生成物の体内動態について検討した. 【結果及び考察】CDDP-STS反応生成物としては, STSがCDDPに置換配位した陰イオン性の化合物が考えられたので, 分離カラムに陰イオン交換カラム, 溶離液に過塩素酸ナトリウム溶液を用いて, 反応生成物を検索した. その結果, CDDP-STS反応生成物としては, クロマトグラム上で3種の化合物を見い出し, 保持時間の短いものから順にP1, P2, P3とした. 次にこれら反応生成物の検出法として, チオ硫酸イオンの還元作用とセリウム(III)の蛍光性に着目し, 反応試薬にセリウム(IV)を用いたポストカラム反応蛍光検出法について検討した. その結果, セリウム(III)の蛍光スペクトルに基づき, 励起波長255nm, 蛍光波長350nmで検出することにより, 血漿中のP1, P2, P3を高感度に検出・分析することが可能になった. そこで, この方法を用いて, ウサギにCDDPとSTSを併用投与した系における血漿中のP1, P2, P3を分析したところ, ウサギ血漿中にP1, P2, P3が認められ, 血漿中の白金濃度に占めるこれら反応生成物の割合は経時的に増加した. 【まとめ】本研究により, 生体内におけるCDDP-STS反応生成物の体内動態についての知見を得ることができ, CDDP及びSTSの最適投与法の確立に向けて確実に前進することができた.
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