1988 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性な白金錯体の体内動態と活性発現に関する研究
Project/Area Number |
62570962
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Research Institution | Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮崎 元一 金沢大学, 薬学部, 教授 (50009164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木津 良一 金沢大学, 薬学部, 助手 (80143915)
大久保 登 金沢大学, 薬学部, 助手 (30115216)
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Keywords | 生理活性物質 / 制癌剤 / 白金錯体 / Cis-diamminedichloroplatinum(II) / 体内動態 / 副作用 / 腎毒性 / チオ硫酸ナトリウム |
Research Abstract |
〔目的〕生理活性な白金錯体の一つであるシスプラチン(CDDP)は優れた制癌作用を示す反面、副作用が強い。一方、チオ硫酸ナトリウム(STS)は、CDDPの副作用軽減に有効な試剤として注目されている。著者らは昨年度の研究で、血漿及び尿中のCDDP-STS反応生成物(P2及びP3)の高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析法を確立し、CDDPとSTSを併用投与した家兎において、in vivoでもP2及びP3が主たる反応生成物として生成されることを明らかにした。そこで本研究では、STSによるCDDPの副作用低減化で重要な役割を担うと考えられるP2及びP3の構造について検討するとともに、昨年度の研究結果に基づいてP2及びP3の腎クリアランスを求めた。 〔結果及び考察〕まず、P2及びP3をそれぞれ単離・精製した。P2は、シスジアンミンジアクア白金錯体を調製しSTSを作用させた後、セミ分取用陰イオン交換カラムを備えたHPLCに適用し、カラム溶出液のP2画分を分取した。ゲルろ過による脱塩及び再結晶操作により精製した。P3は、37℃で7日間反応させたCDDP-STS混合溶液を陰イオン交換樹脂に流し、過塩素酸ナトリウム溶液で溶出し、P3画分を分取した。ゲル濾過による脱塩及び再結晶操作により精製した。得られたP2及びP3について元素分を行なったところ、何れの化合物の実測値も著者らが予想した化合物の計算値と良く一致し、P2はシスジアンミンジチオサルファート白金錯体、P3はトリスチオサルファートアンミン白金錯体であることが強く推定された。次に、昨年度の研究結果に基づきP2及びP3の腎クリアランスを求めたところ、P2及びP3は血漿中ろ過性白金に比べより尿排泄され易い化合物であることが明らかになった 〔まとめ〕本研究により、P2及びP3の構造が推定された。更に、P2及びP3が尿排泄され易い化合物であることが明らかになり、P2及びP3の体内挙動が、STSによるCDDPの副作用低減化において重要な役割を担っていると考えられた。
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