1987 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陰性菌の外膜の透過性を増大するカチオン性薬物の作用機構
Project/Area Number |
62570967
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
勝 孝 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 助手 (40112156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広田 喬 岡山大学, 薬学部, 助教授 (00033275)
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Keywords | 生体膜と薬物き相互作用 / 構造活性相関 / 膜透過 / 両親媒性分子 / ケイ光プローブ |
Research Abstract |
過去一年間, 我々は種々のカチオン性薬物を合成し, それらの大腸菌外膜の透過性に及ぼす作用を検討してきた. その結果, 薬物の疎水性部分のバルキネスが透過性増大を引き起こすために重要であることがわかった. 一方, 薬物の作用により, 大腸菌外膜からリポ多糖が遊離してくることがわかった. リポ多糖の遊離量は薬物添加量の増加と共に増大した. そこで我々は薬物が膜に開ける穴のサイズに関心をもった. 穴のサイズを決めるのには大腸菌を用いるよりも赤血球の方が容易であったので赤血球を用いた. 過去の文献を調べてみるとカチオン性薬物であるグラミシジンSあるいはメリチンといったこれまで比較的よく研究されてきた物質ですら穴のサイズは詳細には検討されていないことに気がついた. これらの薬物の赤血球膜に開けた穴のサイズの薬物濃度依存性を定量的に検討した結果, 穴を初めて形成する薬物濃度と赤血球細胞質膜からリン脂質を遊離する濃度はほぼ一致し, 透過性変化は膜構成成分の遊離により引き起こされることがわかった. この新しい事実は専門誌に発表した. ところで, リン脂質は通常リンを分析することにより定量できるが, この方法は試料量を大量に必要とし時間もかかる. 我々は間接的な方法としてケイ光プローブ(アニリノナフタレンスルホン酸塩, ANS)を使用することを考えた. ANSのケイ光強度はリン脂質存在下で著しく増大する. 薬物自身が妨害しないことは, ANSが薬物の臨界ミセル濃度付近からでないとケイ光強度を増大しないことから確認された(生理条件下での薬物の臨界ミセル濃度は備品として購入した表面張力計により調べた). ANSを用いる方法はリポ多糖の分析にも有効であることを見いだしている. 今後は, 赤血球および大腸菌外膜の膜の違いにより薬物の作用の違いがあるかどうかを中心に検討していく.
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