Research Abstract |
1.ヒト血清中のレクチンであるマンナン結合タンパク質(MBP)の補体活性化作用について調べた. ヒトプール血清(1l)より, アフィニティクロマト,ゲルろ過等によって, 精製MBP標品を約1mg単離した. ヒツジ赤血球(1×10^8個)にCrCl_3法で酵母マンナンを結合させたのち, 0.1μg程度のヒト血清MBPと反応させ, MBP感作赤血球を調製した. これに, ヒト補体を反応させると, ほゞ完全な溶血が認められ, この溶血反応は, 赤血球に結合させるマンナン量, 加えるMBP量, 補体量に依存し, また補体第4成分に依存的であった. したがって, ヒトの補体系がヒト血清MBPによって, 古典的経路を介して活性化されることが明らかとなった. 2.補体の活性化の際に, MBPの果たしている役割を調べた. まず, ヒト血清より補体第1成分のサブユニットであるC_<1q>,C_<1r>,C_<1s>を単離精製し, C_<1r2s2>を^<125>Iで標識した. MBP感作赤血球にC_<1q>および^<125>I標識C_<1r2s2>を反応させたところ, C_<1q>の有無にかゝわらず, MBPの存在する場合にのみ, C_<1r2s2>の赤血球への結合が見られた. さらに, アフィニティクロマトにより, C_<1q>を除いたヒト補体を調製した. このC_<1q>を含まない補体によっても, MBP感作赤血球の溶血が起った. MBPは分子内に部分コラーゲン様構造をもつ点で, C_<1q>と共通の性質を有していることがすでにわかっている. したがって, MBPによる補体の活性化はマンナンとMBPとの複合体に補体成分C_<1r2>s_2が直接結合することにより開始されること, すなわちMBPはリガンドと結合したのち, C_<1q>に代って, 古典的経路を介して補体活性化の引き金の役割を果たすことが明らかとなった. 3.さらに, 大腸菌を被検菌として行なった予備的実験において, 血清MBPと反応させた菌は補体依存的に殺菌される結果を得ているので, 今後はMBPの補体依存的殺菌作用について詳細に調べ, 血清レクチンの生体防禦における役割について解明する.
|