1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62571006
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
山本 清高 東京都老人総合研究所, 生物学部, 主任研究員 (90073022)
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Keywords | 血管内皮細胞の長期継代培養 / 毛細血管内皮細胞の培養法 / 機能変化 / 細胞老化 |
Research Abstract |
研究成果:1.血管内皮細胞は,これまで臍帯静脈,同動脈,成人末梢動脈,同静脈,および大網由来微小血管より,それぞれ細胞株を樹立しているので,今年度は,脳毛細血管からの内皮細胞株の樹立を試みた。最初に,ウサギ脳を用いて毛細血管内皮細胞の単離,純培養を行った。酵素(コラ-ゲナ-ゼ)処理後,密度勾配遠心法及びメッシュ濾過法の組合せにより内皮細胞の単離に成功した。しかし,これらの方法のみでは,周細胞の混入を常に完全に除去することはできず,クロ-ニング法を併用して始めて内皮細胞株の樹立に成功した。この方法論の確率により,次に,ヒト脳毛細血管内皮細胞株の樹立を試みた。材料の入手が困難なためもあって,現在までにやっと1細胞株の樹立に成功した。2.成人末梢血管内皮細胞について,現在までに樹立した13細胞株を用いて,血管の種類や固体年齢の相違により分裂寿命や分化機能に差異があるか調べた。1)分裂寿命.いずれの細胞株とも継代数の進行にともない増殖能が低下し,ついには有限の分裂寿命(15ー48代)を示した。分裂寿命は,細胞株間(個体間)で大きく異なるが,動脈と静脈の間では有意差はみられない。また,分裂寿命と個体年齢との相関も現在までのところ観察されていない。2)分化機能.抗血栓作用をもつプロスタサイクリン(PGI_2)産生能は,分裂加齢の進行により有意に低下した。また,PGI_2と同様に血栓防止作用をもつ細胞表面の陰性荷電も継代と共に徐々に低下した。生体内でも老人では血管壁のPGI_2産生や内皮細胞の表面陰性荷電が減少していることが報告されている。このように,in vivoおよびin vitroでの細胞老化による細胞増殖能の減少(修復能の低下),PGI_2産生能や表面陰性荷電の減少は,老人では内皮細胞の老化により動脈硬化の起こり易い環境になっていることを示している。血液凝固作用をもつ第八因子関連抗原は,最終寿命でもすべての細胞が保持していた。
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[Publications] K.Yamamoto: "Changes in the functions of human vascular endothelial cells during in vitro aging." Zool.Sci.6. 1202 (1989)
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[Publications] 山本清高: "動物血管内皮細胞の長期継代培養法" 現代化学. 16. 151-152 (1989)
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[Publications] 山本清高: "老化と内皮細胞" 臨床科学. 26. 95-102 (1990)
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[Publications] 山本清高: "血管研究法の進歩" 学会出版センタ-,